大相撲小言場所


秋場所をふりかえって〜琴奨菊の大関昇進確実に〜

 期待のトリプル昇進はならなかった。横綱昇進をかけた日馬富士は序盤戦に崩れた。勝ちたい勝ちたいという気持ちばかりが前に出て、自分の相撲を取れずに最後までいってしまった。それだけプレッシャーのかかる毎日で、それにつぶされてしまったということなのだろう。
 大関昇進をかけた鶴竜もまた同様で、こちらも序盤戦で早くもプレッシャーに負けてつぶれた。琴奨菊は先場所終盤、そのプレッシャーにつぶされた経験から精神集中と平常心の維持を最後まで心がけ、ついに12勝3敗で大関の座を射止めた。稀勢の里は中盤に勝ちを意識してしまい腰高の相撲で連敗したが、白鵬戦の勝利を機に再び腰を落として下半身で相撲を取り、12勝3敗。来場所に大関昇進をかけることになった。稀勢の里は殊勲賞、琴奨菊は殊勲賞と技能賞をそれぞれ獲得した。
 優勝は白鵬。稀勢の里に小手に振られてひっくり返され、続いて琴奨菊に真っ向から寄り切られた時には優勝も危ないかと思われたが、把瑠都戦を苦しみながらも勝って自分の相撲を取り戻し、千秋楽の日馬富士戦には先場所の雪辱を果たし、20回目の優勝を成し遂げた。まだまだ優勝回数をのばしそうな安定感がある。
 大関陣では把瑠都が10勝したが、序盤戦の取りこぼしで最後まで優勝争いにからむことなく終わった。琴欧洲は途中休場。いい時の大きな相撲が全く影をひそめてしまった。
 敢闘賞の臥牙丸は馬力で相手をもっていく豪快な相撲がつぼにはまった。三賞は逃したが、豊真将の鋭い攻めの復活も特筆もの。1勝7敗から7連勝した豊ノ島もこのケースは3回目という勝利への執念と相撲の粘り強さに驚かされた。序盤戦で大関陣を撃破した隠岐の海も地力のついたところを見せてくれた。
 内容のある相撲が多く、初日は満員御礼が出なくて「大相撲の危機」と週刊誌にかかれたが、日を追うごとに観客数も増えた。最後までもつれる優勝争いにファンも足を運びたくなったのだろう。観客を呼び戻すほどの力を持つものは、やはり土俵の上での力士の相撲以外にないのである。

(2011年9月25日記)


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