二場所連続で新大関の誕生と、相撲界は盛り上がりを見せている。不祥事さえなければもっと話題になっていいのだが、どうしても年寄名跡の扱いがどうしたとかそんな話の方がとりあげられやすくなるのは残念な限り。
それはともかく新大関稀勢の里である。琴奨菊以上に協会はこの新大関に期待しているように見える。それはそうだろう。関取に昇進する前から未来の横綱大関と目されていたのに、大関に昇進するまでの足踏みが長すぎた。彼が大関に昇進することで真のスターが誕生するという期待がかかっているのだ。
実際、白鵬に対抗しうる横綱の誕生が待望されている。稀勢の里はそうなる可能性を大きく秘めた存在なのである。
しかし、先場所までの相撲ならば、横綱になるのは厳しいと、私は見ている。なぜならば「型」がまだ決まっていないからである。例えば白鵬ならば右でまわしをつかめばもう相手があきらめる。琴奨菊ならば中にもぐりこんでがぶる体勢ができたらもう安心である。
稀勢の里にはそれがない。力強さと運動神経では白鵬をしのぐ相撲を取る時がある。しかし、こうなったら勝てるという「型」をまだ確立できていない。大関昇進三場所前の勝ち星が32勝にとどまったのは、「型」がないから相手の相撲に合わせて相撲を取り、相手のペースに巻き込まれやすいからである。苦手力士を何人かもっているというのもそれが原因だろう。
だから、大関になったことで大化けしてほしいのだ。「型」を作りあげてほしいのだ。そうすれば横綱は向こうから転がりこんでくるだろう。
新大関の場所だから、優勝争いに残ることができれば上出来だろう。だから、目先の勝ち星よりも「型」をつくることに専念してほしい。今場所の優勝の最有力候補はもちろん白鵬だけれど、それをおびやかすような相撲を新大関には期待したい。
(2012年1月7日記)