大相撲小言場所


平成二十四年春場所展望〜浪花の春に相撲が戻る〜

 昨年は2月に八百長問題が発覚し、3月の大阪場所は開催を中止された。年に1度の楽しみを奪われた私は「もっとばれんようにせんか!」と見当違いの怒りを元春日錦や清瀬海らに対してぶつけたりしていたものだ。
 しかし、昨年7月から通常通りの開催が再開され、浪花の春に相撲が戻ってきた。2年間待たされた私は、むろん今場所も1日だけではあるけれど、あの懐かしい空気を吸いに行く予定である。
 今場所は大関把瑠都の「綱取り場所」といわれている。場所前の稽古も充実していたと報道されている。しかし、私は把瑠都の今場所後の横綱昇進は難しいと考えている。なによりも精神面でまだまだ甘い。波に乗ると先場所のような勢いのある相撲を取るが、油断して下位力士に取りこぼすことも多い。1度の優勝だけでそのような精神面の強さが身についたとは思えない。また、技術的にも脇の甘さや強引さで墓穴を掘る相撲が直ったとも思えない。
 よって、把瑠都は今場所は初めて経験する「綱取り場所」で様々なことを勉強していただきたい。なにも急いで未熟な横綱を作る必要もないと、相撲協会にも言いたい。
 精神面でいえば鶴竜である。技術面でも身体面でも大関にふさわしい器量を備えつつある。しかし、鶴竜はその頭の良さが逆に考え過ぎで自分の相撲を見失う面が見られる。ここのところが克服されていれば、大関の地位は向こうから転がりこんでくるだろう。今場所は特に序盤戦にどれだけ取りこぼさずに乗り切れるか。大関昇進への大きなカギになるだろう。
 気温が高くなってきたら、白鵬の腰痛もましになるだろうから、今場所は気候との戦いになりそうな気がする。三寒四温の不安定な気温変化にどれだけ対処できるかで優勝争いに大きな影響があるのではないか。
 期待株は地元出身の勢だ。十両に昇進してから花開いた攻めの相撲が幕内でどれくらい通用するか。楽しみにしたい。
 元久島海の田子の浦親方が急逝し、部屋を移籍した碧山たちの弔い合戦にも注目したい。ぜひ活躍して師匠の墓前によい報告をしてもらいたいものだ。
 新体制になって北の湖親方が理事長に返り咲いた。春場所担当となった貴乃花親方は吉本新喜劇に出演するなど、PRに余念がないが、なによりも優勝争いの面白さや若手の台頭など土俵の上で話題が盛り上がることが一番大切。貴乃花親方だからこそ、「荒れる春」にカツを入れて土俵の充実をファンにアピールしていただきたい。
 ともあれ、2年ぶりの春場所、おおいに楽しみたい。
 

(2012年3月10日記)


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