大相撲小言場所


平成二十五年春場所展望〜ダークホースは鶴竜〜

 先場所は日馬富士が勢いをつけて全勝。一方、白鵬は持病の腰痛が出たか油断したような相撲で不覚をとる相撲が目立ち、またも国技館での優勝を逃した。2月の民放主催の相撲トーナメントでもまだ本場所で顔合わせをしていない千代大龍にあっさりとやられるなど、淡白な面が見られた。しかし、これで終わる力士でないことは確かだし、そうそう日馬富士にやられてばかりもいられない。それを一番自覚しているのは白鵬自身だろう。巻き返しに期待したい。
 一方、日馬富士は先場所の優勝で、勢いがついたら誰にも手がつけられないところを見せた。逆にいえば、序盤戦、または終盤につまづくとがたがたと相撲が荒くなってしまうという欠点を克服できたかどうか。今場所、日馬富士の相撲を見る時は、そこに着目していきたいと思う。
 崖っぷちの琴奨菊、ここというところで強引さが目立ち乗り切れない稀勢の里の両大関は、一場所通して安定した相撲が取れるかが課題だが、両者ともに緻密な相撲を見せてもらいたい。
 今場所のダークホースは鶴竜か。相撲トーナメントで優勝したのをきっかけに、大関昇進当時の勢いを取り戻してもらいたいものだ。そうすれば、両横綱の優勝争いに割って入ることも不可能ではない。
 御当所となる豪栄道と勢の両力士の相撲にも注目だ。特に豪栄道は、大関昇進が白紙になっただけに、一からやり直しの場所となる。これを最後のチャンスと思って前に出る相撲に徹してほしい。豪栄道の場合、器用な相撲を取れてしまうことがあだになっているように思う。勢は初めて上位とあたる。今場所は横綱大関陣の胸を借りるつもりで、しこ名そのままに勢いのある相撲を取り切ってほしい。
 曲者安美錦、実力のついた栃煌山、上位と当たる可能性のある千代大龍など、「荒れる春」を演出してくれそうな役者も揃ってきた。大関再昇格に失敗した把瑠都もここで終わってしまうつもりはないだろう。気持ちはまだ大関のつもりでその体を生かした馬力相撲をとれれば、一から大関昇進に向けて出直すことも可能ではないか。
 苦労して新入幕となった大岩戸と双大竜は、これまで辛抱して蓄えてきた力を幕内でいかんなく発揮してほしい。
 年に一度の浪速の相撲。今年も私は1日だけでも足を運びたい。おそらく終盤の面白くなっているところで見に行けるだろうから、千秋楽までもつれるような面白い優勝争いを期待している。
 

(2013年3月9日記)


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