初日から13日目まで、白鵬と稀勢の里が白星を積み重ね、14日目に全勝対決。双方全力を尽くした一番は、すくい投げの白鵬に軍配が上がった。敗戦後、脱力したように土俵に仰向きに倒れたまま動けなかった稀勢の里。千秋楽に勝てばまだ優勝の可能性は残していたが、琴奨菊の前にがちがちになって動けず、それまでの力強い相撲がどこかへいったかのように寄り切られてしまった。これで白鵬の優勝が決定。白鵬の前に立ち合い変化の日馬富士は敵ではなかった。
白鵬の優勝回数は朝青龍と並ぶ25回目。ただ、ずっと安定した力強い相撲で勝ち進んできた稀勢の里を意識してか、勝ちはしたが前さばきのうまさで相手をあしらうような相撲が多かった。それでも全勝してしまうのだから、安定感は抜群である。
優勝争いをした稀勢の里は、来場所の出来次第では横綱昇進もあり得る。あとは精神面でむらをなくすこと。
日馬富士は2日目に妙義龍の速攻に屈し、5日目には栃煌山の肩透かしに苦杯をなめて優勝争いから脱落。それでも中盤は気持ちを切らすことなく11勝をあげて横綱としてはまずまずの成績で終えることができた。
優勝争いに食らいついていったのは鶴竜。大関になって初めて土つかずで給金を直したが、9日目に琴奨菊に敗れると、終盤は4連敗で10勝止まり。ただ、敗れた相手はみな大関以上で、今場所ついていえば取りこぼしはなかった。琴奨菊は膝の具合がよくなってきたのかがぶり寄りが出るようになり、11勝をあげた。序盤に豪栄道と妙義龍に連敗した時にはどうなるかと思わせたが、まずは復活したといっていいだろう。カド番大関の琴欧洲は、序盤は4連勝と好調だったが、5日目に妙義龍に敗れると、あとは連敗が多くなり、千秋楽に勝ち越しを賭けて鶴竜と対戦。相手の後ろにまわる必死の相撲で辛うじて勝ち越した。
活躍が目立ったのは妙義龍。持ち前のスピード相撲で1横綱2大関を破る活躍を見せて技能賞を獲得した。千代大龍は下位で10勝し、千秋楽の妙義龍戦に勝てば敢闘賞というところだったが、妙義龍の速攻の前に何もできずに終わった。
期待を裏切ったのは豪栄道と栃煌山。先場所までにあった気魄があまり見られなかった。
今場所は14日目に横綱大関が優勝をかけて対戦し、大いに盛り上がった。来場所も白熱した優勝争いが展開されることを望む。
(2013年5月26日記)