大相撲小言場所


平成二十五年秋場所展望〜遠藤は本物か〜

 今場所は、例えば白鵬の連勝記録がかかるとか、稀勢の里の横綱がかかるとか、そういった目玉になるトピックがない。ただ、少しずつ相撲にほころびが見えつつある白鵬を制して他の力士に優勝のチャンスはあるだろうし、白鵬独走ということはないのではないか。白熱した優勝争いを今場所こそ見せてくれるという期待は、ある。
 実は、私は新入幕の遠藤の活躍に期待をしているのだ。しこ名も髷も追いつかないままスピード入幕をした遠藤だが、幕下からここまでの相撲を見ていると、このままうまく育ったら横綱大関の座も狙えるようにいずれなるのではないかという期待を持たせる。
 大学相撲から入門した多くの力士は、体も取り口もできあがっているので、全力で相撲を取らなくともそこそこの地位にまですぐにあがってきてしまう。相撲をなめるということないのだろうけれど、引き技などの小手先の相撲で勝つと、その癖が取れずに残ってしまう。そして、三役にも上がれないまま幕内中位に安住してしまう。そんな力士を何人見てきたことだろう。
 しかし、遠藤は違う。引き技で楽をして勝つようなまねはここまでほとんど見られない。四つ相撲の型を持ち、敗れても、その型を崩さず自分の相撲を取り切っている。幕下では押し相撲に馬力負けしたりする場面も見られたが、稽古をしっかりしているのだろう、十両入りしてからは下半身が安定してそうそう馬力だけでは崩れなくなってきた。
 立派な体にしっかりした型がある。ここに卓越した技と精神的な強さが加わってくれば、一気に上位に駆け上がるのではないだろうか。
 輪島を思い出す。私は出世してからの輪島しか見ていないけれど、左下手投げという絶対的な武器で一気に横綱に駆け上がった。また、小兵力士がかきまわしてきても落ち着いて相手を見、つかまえて追いこんでいく相撲もみごとだった。
 遠藤は輪島になれるのだろうか。それはまだわからない。しかし、そうなるのではと思わせるだけの強さの片鱗をすでに見せている。今場所は勝ち負けよりも、自分の相撲がどれだけ幕内で通用するのか徹頭徹尾取り切ってほしい。
 

(2013年8月14日記)


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