１年おさめの九州場所。優勝争いを予想すれば、当然本命は白鵬で、対抗はなく、穴で稀勢の里、大穴で日馬富士ということになるだろうか。白鵬が安定しているというよりは、他の力士が無策に過ぎる。白鵬の弱点を狙って勝てるのは稀勢の里と日馬富士くらいなのだが、両力士とも取りこぼしがあり、特に稀勢の里はここ一番というところでの精神面に問題がある。
というわけで、今場所も優勝争いそのものに楽しみがあるわけではない。
あ、わずか数行で展望しきってしまった。
楽しみがあるとすれば、豪栄道の相撲だろう。優勝争いにからむことができれば、来場所には大関昇進がかかってくることになろう。今場所はその足場固めという意味で大切な場所になる。出足を磨いていければ、優勝できずとも１０勝以上して来場所に希望をつなぐことができよう。ただ、豪栄道は相撲がうま過ぎて小手先でなんとかしてしまうような時があるので、その悪癖が出ないようにしなければならないだろう。張り差しのようなことはせず、頭から当たってとにかく前に出る相撲をとること、それに尽きる。
新入幕の大砂嵐も面白い存在になりそうだ。この力士はあたりが強く、出足もいい。まだ相撲の型をきっちりと覚え切れていないのが、現状ではプラスに働いている。幕内の土俵で大暴れしてくれることを期待したい。
逆に不安なのが遠藤。先場所は怪我で途中休場し、今場所もまだ剥離骨折が完治していないそうだ。完治するまで休ませるのか、多少無理をしてでも出場させるのか、追手風親方は判断が難しかろう。土俵での怪我は癖になる。ここまで順調に来ていただけに、怪我に強い力士になってもらいたい。
怪我がほぼ治った豊真将の活躍も楽しみだ。先場所など、本来の相撲が取れるようになってきている。ぜひその自信を今場所につなげていってほしい。
阿覧が引退し、帰国した。師匠の定年で三保ヶ関部屋が消滅するため、春日野部屋に移籍が決まったばかりだった。移籍までして相撲を取り続けるだけの情熱がなかったということになるのか。素質は申し分なかったが、レスリングで身について後ろに下がる取り口のために期待していたほど出世できなかった。名門部屋が後継者難で少しずつ消滅してしまっている。あまり相撲部屋が増えすぎてもよくないが、こういう名力士を輩出してきた部屋の消滅はやはり寂しい。協会も何らかの対策を練る時が来ているのではないだろうか。
（２０１３年１１月９日記）
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