大相撲小言場所


平成二十六年春場所展望〜鶴竜と稀勢の里の双曲線〜

 先場所は稀勢の里が優勝すれば横綱と言われていたが、最終的には途中休場で今場所は一転してカド番となってしまった。逆に、まったく注目されていなかった鶴竜が千秋楽の本割で白鵬を下して優勝決定戦にまで持ち込み、今場所優勝したら横綱と言われている。一場所違うだけでこんなに立場が逆転するとは予想外の展開となってしまった。まさに双曲線を描くかのようである。稀勢の里は常に横綱を狙える大関と言われていたのに対し、鶴竜は毎場所勝ち越すのがやっとという感じでくすんでいたのが一転してしまったのだから。
 では、鶴竜の優勝はあるか。こればかりはふたを開けてみないとわからないけれど、私はその可能性は薄いと思っている。先場所は気がつけば白鵬にぴったりくっついていたという感じで、いわば注目が稀勢の里にいっている隙を突くようにして優勝争いにかんでいたからだ。プレッシャーとは無縁の快進撃。それが先場所の優勝同点につながった。
 それに対し、今場所は大関昇進後初めて「横綱昇進」を意識させられるということになる。条件がまるで違う。そのような中で先場所のように勝ち進めるかどうかは疑問だ。序盤戦を切り抜ければわからないけれど、果たして平常心で臨めるかどうか。今場所は大きなプレッシャーを経験するための場所とみた方がよいだろう。
 逆に、稀勢の里は部屋のごたごたから時間がたち、落ち着いて相撲をとれる条件が整った。カド番脱出ということで一定の注目はあるだろうが、プレッシャーは先場所とは比べものになるまい。怪我の後遺症さえなければ、またも優勝争いにからんでくるのではないだろうか。
 ただ、優勝ということになると、やはり白鵬が最有力であることは間違いないだろう。特に大阪場所は白鵬が得意とするところなので、連覇の可能性はかなり高い。
 となると、あとは前頭筆頭にまで昇進した遠藤がどこまで横綱大関陣に通用するかというところが序盤戦の話題になってくるだろう。場所前の出稽古では白鵬に全く歯が立たなかったようだが、遠藤は本場所に強いタイプ。ひとつくらいは番狂わせがあってもおかしくない。
 話題という点では少々寂しい場所になるが、「荒れる春」と呼ばれる大阪場所だけに、なにか大番狂わせが起こって面白い土俵になることを期待したい。
 

(2014年3月8日記)


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