大相撲小言場所


名古屋場所をふりかえって〜白鵬35度目の優勝、旭天鵬引退〜

 新大関照ノ富士が序盤は快調に飛ばしていたが、7日目に先輩大関の豪栄道に速さ負け。白鵬と鶴竜の両横綱にも敗れ、千秋楽はカド番脱出をかけた琴奨菊の立ち合いの変化についていけず土俵に這い、11勝4敗で場所を終えた。新大関の場所で11勝は立派なもの。ただ、まだまだ強引さが見えた。
 横綱日馬富士は初日に妙義龍に勝ったものの故障個所を再び痛めて2日目から休場。しかし、休場明けの横綱鶴竜がよくがんばり土俵を盛り上げた。9日目に栃煌山の押しに屈するまでは持ち前の速攻で8連勝。13日目、稀勢の里に立ち合いから圧倒されて敗れたが、1差で白鵬を追う。白鵬は9連勝のあと、栃煌山に頭を低く突っ込んだところをすかされて敗れたが、そこからは少し取り口も慎重になり、豪栄道と稀勢の里には速攻で決め、千秋楽に優勝をかけて鶴竜と対戦。左四つがっぷりの大相撲で鶴竜を寄り切り、35回目の優勝を飾った。
 ただ、今場所の白鵬は特に序盤はとにかく速攻で勝ちにいく相撲が目立ち、横綱らしいどっしりとした相撲が少なくなった。9日目の逸ノ城戦で見せたダメ押しのような勝負が決まってからの張り手は見苦しかった。先場所負けたことへの意趣返しだとしたら、それはやり方が間違っていた。
 殊勲賞は両横綱を倒した栃煌山で文句なし。今場所は、あの優勝決定戦に出た時を思い出させる足のよく出る相撲で優勝争いにかんでいった。ただ、終盤息切れして10勝止まりに終わったのは、今後大関昇進を目指すのにはちょっと不利になるだろう。
 大関陣は稀勢の里がやはり序盤に取りこぼし10勝で終わる。豪栄道もせめて横綱のどちらかに土をつけるくらいはしてほしかったが、歯がたたず9勝止まり。満身創痍の琴奨菊は千秋楽まで勝ち越しが決まらず、前記の通り千秋楽に立ち合いの変化で照ノ富士にやっとこさ勝って大関の座を維持するのがやっと。今場所も引き立て役に終わった。
 敢闘賞は元気な相撲で12勝をあげた嘉風。よく体が動いていた。他に、肩の怪我やラマダンという条件下で10勝をあげた大砂嵐、相撲のうまさに磨きのかかった佐田の海、持ち前の相撲勘の良さが光った隠岐の海、前さばきのよさが目立った遠藤といったところにも三賞の価値があった。技能賞を佐田の海か遠藤に受賞させてもよかったのでは。技能賞はまたも該当者なし。しかし、私にはそうは見えなかった。やけにハードルが高いのはなぜなのか。
 期待された逸ノ城は明らかに稽古不足。もっともっと横綱に稽古をつけてもらい、精進していかないと、大銀杏が結える頃には十両落ちもあり得る。
 幕内の旭天鵬と十両の若の里の両ベテランが大きく負け越し。それぞれ陥落は必至とあり、引退は濃厚。千秋楽の時点で進退についてはまだはっきり語っていないが、かねてから陥落したら引退と口をそろえていっていたことなどを考えると、引退は濃厚。お疲れさんの言葉は、はっきりと発表されてから書くことにしたい。
 鶴竜の奮起で千秋楽まで優勝争いが続き、千秋楽も内容の良い相撲でファンを沸かせた。まずまず面白い場所だったといえるのではないか。

 場所前に、元大関貴ノ浪の音羽山親方が急死。個性的な相撲と引退後のわかりやすい解説、貴乃花部屋付きの親方として後進の育成にも手腕を発揮し、審判委員として今後のさらなる活躍が期待されていただけに、非常にもったいないという思いが今も続いている。謹んで哀悼の意を表します。
 

(2015年7月26日記)


目次に戻る

ホームページに戻る