大相撲小言場所


平成二十七年秋場所展望〜技能賞を力士に!〜

 優勝争いの主役はやっぱり白鵬か。ただ、宮城野部屋の改築などで、出げいこが中心になっていたことや、部屋付きの熊ヶ谷親方(元十両金親)が個人的に雇っていた運転手に暴行を働いたということで逮捕されたりと、いつもの場所よりは集中して稽古できたわけではなかろうから、いつもの場所のようにはいかないかもしれない。ただし、白鵬の本場所中の集中力の高さは尋常ではないので、どこまで影響があるかはわからないが。
 白鵬に対抗できるのは先場所最後まで優勝争いをした鶴竜と、大関昇進2場所目で精神的な余裕もできてきたであろう照ノ富士あたりか。稀勢の里はとにかく下位への取りこぼしをなくしてほしい。あと、勝敗を気にしすぎているように見えるので(だからここい番で取りこぼす)、精神面の強さが加われば、初優勝の可能性が見えてくるだろう。
 今場所に望むものといえば、技能賞である。ここ数場所、「該当者なし」という状況が続いている。力士の技能が落ちたわけではなく、今場所はこの力士にあげたいと思える力士がいないわけではない。今場所は敢闘賞は該当者なしかなと思っていても意外な力士が受賞したりするのに、技能賞についてはそれがないのだ。
 三賞は、審判部と記者クラブのメンバーによって選考されるが、場所後の専門誌を読むと、技能賞に関しては候補が上がっても投票で過半数を得る力士がいないようなのだ。該当者なしが過半数を超える場所もある。ハードルが高すぎるようである。三賞は力士の励みになるように制定されたのだから、むやみにハードルを下げる必要はないのだが、高すぎても力士の士気をそぐのではないか。そこらあたり、選考委員会はもっと力士に対して励ますような選び方をしてほしいものだ。
 今場所は技能賞の受賞者が出ることを願っている。

 元関脇の旭天鵬が引退。晩年に初優勝してから、その存在がクローズアップされた感があるが、若手の頃から正攻法の力士として注目された実力者だった。師匠の大島親方の定年退職ですぐに部屋を継ぐのかと思ったが、友綱部屋に移籍して現役を続けた。これが転機だったように思われる。旭鷲山とともに、モンゴル力士のパイオニアとして道を開いた功績は大きい。今後は大島親方として後進の育成にあたる。ぜひ大島部屋の再興をしてもらいたい。
 元関脇の若の里も引退。若くして早い出世で大関候補とも呼ばれた。特に同じ鳴戸部屋の隆乃若とは競うようにして番付をあげていき、鳴戸部屋躍進の基礎を固めた。ただ、怪我に泣かされて大関昇進はならなかったが、十両に落ちても正攻法の相撲を貫いた。隆乃若が引退したあとも現役を続け、稀勢の里や高安ら後輩たちを引っ張っていった。今後は西岩親方として後進の育成にあたる。稀勢の里が横綱に昇進できるように指導してもらいたいものだ。
 お二人とも、お疲れ様でした。土俵を沸かせてくれてありがとうございました。
 

(2015年9月12日記)


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