大相撲小言場所


九州場所をふりかえって〜日馬富士暴力事件と白鵬V40〜

 横綱日馬富士が初日から2連敗。そして大きなニュースが報じられる。日馬富士が巡業中に貴ノ岩に暴力をふるい、貴ノ岩はそのために負傷して初日から休場したというのだ。日馬富士は3日目から休場。貴乃花親方は鳥取県警に被害届を出していて、日馬富士の書類送検が確実視されている。
 真相はまだ明らかになっていないが、貴ノ岩の態度が悪いのを、酒に酔った日馬富士が激昂して暴行に及んだという。当初はビール瓶で殴打したと報じられたが、同席した白鵬の発言からビール瓶は使用していなかったとされる。どちらにしても暴力事件が起きたことは事実で、協会の危機管理委員会が同席していた鶴竜と照ノ富士には事情聴取している。場所後には白鵬や石浦にも事情を聞くということであるが、この事件でテレビのワイドショーやスポーツ紙は持ちきりとなり、本場所への関心が薄れてしまったことは残念でならない。
 もっとも本場所も鶴竜が初日から全休。大関復帰を目標としていた照ノ富士は初日から4連敗して休場し、来場所の大関復帰はならず。稀勢の里は9日目までに5敗し、途中休場。カド番の高安は11日目に勝ち越しを決めたが、先場所いためた箇所が完治しておらず13日目から休場。横綱と大関の対戦は千秋楽の白鵬と豪栄道戦のみという寂しさ。
 白鵬は初日から快調に突っ走っていたが、11日目の嘉風戦で立ち合いが成立したあとに力を抜き、一方的に寄り切られた後、なんと自ら物言いをつけて聞きいれられないとなると土俵に上がらず、式秀審判に促されて土俵に上がったものの弓取り式が始まるまで土俵から降りないという醜態をさらした。白鵬の言い分では、立ち合い遅れて立った嘉風とタイミングが合わず待ったをしたとのことだが、ビデオで見ても白鵬はしっかりと手を突いて立ち、嘉風は待ったどころか立ち遅れたもののしっかりと出足よく突っ込んでおり、伊之助親方も「はっけよい残った」と立ち合い成立を宣告している。翌日審判部で謝罪したとはいえ、見苦しかったことは事実。物言いをつけられるのは審判委員と控え力士だけというルールを知らなかったとは言わせない。
 上位陣が総崩れの中、平幕の北勝富士と隠岐の海が2敗で13日目までついていったため、優勝争いはそれなりに終盤まで続いたが、優勝を意識したか14日目に両力士とも足が出ず敗れ、急遽組まれた遠藤戦で白鵬が圧勝して40回目の優勝が決まった。
 40回優勝の金字塔にケチをつけるつもりは毛頭ないが、これだけ横綱大関陣に休場が出ての優勝は、どうにも内容的に薄くなってしまったのは否めない。
 殊勲賞は日馬富士、稀勢の里、高安を破った貴景勝。前頭筆頭で11勝は立派。ひたすら押しに徹し、引かれても前に落ちない出足の良さが光った。敢闘賞は隠岐の海と安美錦。優勝争いに最後までからんだ隠岐の海は久しぶりに大器健在を示した。安美錦は39歳での再入幕での勝ち越し。テレビのインタビューではいつものおとぼけぶりを見せるどころか、涙で家族への感謝を語った。幕内でまだ通用するのかという不安を乗り越えての勝ち越しはまさに「涙の敢闘賞」であった。技能賞はやはり優勝争いを演じた北勝富士。得意のおっつけの技能が認められての受賞である。
 三賞は取れなかったが、新小結で序盤は上位の前に星がのびなかった阿武咲が後半は本来の馬力相撲が光って勝ち越したのは立派。逸ノ城も怪物復活を予感させる力相撲で存在感を示した。
 それにしても、2場所続けて横綱大関が次々と休場し、しかも先場所のように横綱と大関の相撲で優勝が決まるということもなく、非常に寂しい場所となってしまった。今場所は優勝争いには加わらなかったが、2場所とも皆勤した豪栄道を讃えたい。
 とにかく、協会は日馬富士の暴行事件の解明をしっかりと進めてほしい。司直の手にゆだねたために協会の調査への協力を拒否している貴乃花親方も、協会幹部への反乱みたいに扱われるのは本意ではあるまい。
 そして来場所こそは横綱大関陣による白熱した土俵が見られることを望む。

(2017年11月26日記)


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