大相撲小言場所


平成三十年春場所展望〜高安に初優勝のチャンスか〜

 先場所は予想外の栃ノ心優勝。相撲雑誌などでは栃ノ心連覇かなどという記事もなくはないけれど、私はそうは思わない。長らく相撲を見続けてきたけれど、その場所だけ相撲の神様が降りてきて優勝する力士が連続優勝するのは至難の業なのだ。無心で相撲を取り、初優勝は果たしたものの、翌場所は雑念が入ったり対戦相手がマークしてきたりで前場所のようにはいかない。果たして栃ノ心が先場所と同じ条件で無心に相撲をとれるか。それは難しいのではないだろうか。しかも場所前に足の付け根を痛めて帰京し、医師の診察を受けている。そう簡単に勝たせてはもらえないと思う。
 では優勝争いの本命は誰か。
 横綱稀勢の里と白鵬が休場を決め、鶴竜も先場所後に故障個所を手術している。鶴竜の場合、先場所の終盤の失速の原因は怪我の再発も原因の一つだったというから、まだリハビリ段階である今場所は、横綱として出場する責任を感じてのものではないか。
 となると、順当に行けば高安が優勝候補の最右翼となるだろう。先場所は栃ノ心との微妙な一番で敗れ、勢いづかせてしまったが、あの一番が高安の勝利であれば、また様相が変わっていただろう。今場所は大きなけがもなく場所前の稽古も着実にこなしていたというから、優勝に一番近い存在だといっていい。豪栄道も御当所場所ということで気合が入るだろうが、先場所の様子を見ていると、足が出ずに前に落ちる相撲が多く、序盤の取りこぼしがなければという条件づきになる。
 先場所壁にぶつかった貴景勝、北勝富士や、勝ち越してはいるが場所を通じてのスタミナ不足を感じさせる御嶽海は、今場所こそ壁をぶち破ってほしい。ここらあたりが優勝争いに食い込んでくると土俵が活気づく。
 先場所新入幕で敢闘賞を受賞した竜電と阿炎は番付を上げてどこまで通用するかが楽しみだ。
 双子の兄、貴公俊が十両に昇進し、史上初の双子関取となった貴源治、初土俵から6場所で十両昇進の炎鵬にも注目したい。
 両横綱の休場で、今場所も混戦となることが予想される。果たして今場所は誰のもとに相撲の神様が降りてくるのだろうか。予測が立たないだけに面白い場所になりそうだ。

 先場所、無免許運転が発覚した大砂嵐が、協会の勧告を受けて引退。得難い個性派の力士だけに、謹慎処分ですませることはできなかったものだろうか。とかく風あたりの強い昨今、協会が見せしめにしたような気がしてならない。再発を防止するには厳罰の中にも温情を示し、立ち直りの機会を与えるということも必要であると思うのだが。人気力士がまた不本意な形で土俵を去る。残念でならない。

(2018年3月10日記)


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