大相撲小言場所


九州場所をふりかえって〜貴景勝、小結で初優勝〜

 横綱白鵬と鶴竜が全休。一人横綱となった稀勢の里は初日の貴景勝戦で膝を土俵に打ちつけて負傷し、4連敗したところで休場。大関豪栄道は勝ち越しはしたが12日目から休場。栃ノ心はまだ指の怪我が回復していなかったか勝ち越すのがやっと。そういう状況で、優勝争いを引っ張ったのは小結貴景勝だった。7日目に御嶽海にはたきこまれたが、その後もひたすら前に出る相撲で相手力士を圧倒した。高安は栃煌山のすくい投げに不覚をとり、竜電に寄り切られて序盤で2敗。それでも中日以降は危ない相撲もあったが土俵際よく粘り、1差で貴景勝を追う。前半戦は好調だった栃煌山は中盤から失速したが、碧山、隠岐の海、阿武咲、大栄翔らがよくついていった。最終的には高安と貴景勝の2人に優勝争いは絞られ、14日目の直接対戦で高安が土俵際で貴景勝を土俵にはわせて千秋楽を迎えた。
 千秋楽、貴景勝は緊張していたが、取組相手の錦木もがちがち。錦木はいい体勢になりながらも引いてしまい、自滅した。支度部屋で決定戦に向けてモニターに背を向けて準備運動をする貴景勝。高安の相手は負け越しが決まっている御嶽海。前日まで精彩を欠く相撲ばかりで高安有利と思われたが、立ち合いから右の強烈なおっつけで高安を苦しめ、高安が強引に出るところをすくい投げで下した。まさに番狂わせの一戦。これで貴景勝の初優勝が決まった。
 むろん今場所の主役は貴景勝。勝敗に関係なくひたすら押しに徹して最後まで自分の相撲をとり切って栄冠をつかんだ。場所前、貴乃花親方の突然の退職で千賀ノ浦部屋に移籍。稽古相手が一気に増えて十分な稽古をつんだ結果が出た。
 旧貴乃花部屋の力士たちはよくがんばった。貴ノ岩は場所前に日馬富士への起訴の件などで稽古に集中できなかったせいか負け越してしまったけれども、十両の貴源治、幕下の貴公俊なども勝ち越して新たな出発を飾った。貴景勝は殊勲賞と敢闘賞も受賞。
 阿武咲は千秋楽に豊山に勝ったらという条件付きで敢闘賞。今場所不調の豊山を難なく押し出して受賞できた。しかし、最後まで場所を盛り上げた碧山、隠岐の海には三賞なし。特に碧山はここ数場所苦しめられていた故障が回復したか、力強い押し相撲で優勝争いに加わったのだから、その押しの技能を認めて技能賞、もしくは敢闘賞を出すべきではなかったか。力士たちのモチベーションを高めるための賞なのだから、場所を盛り上げた力士をもっと讃えるべきだろう。他には始めて幕内上位にあがって勝ち越した錦木や、押し相撲の冴えが見られた大栄翔、毎日熱戦で会場を沸かせた松鳳山などが私の中では三賞に値する活躍だったと思う。
 期待された朝乃山と豊山はそろって不調。大関への昇進の可能性を残していた御嶽海は優勝した場所でつかんだものをすべて吐き出してしまった。残念なことである。
 十両は、新十両の友風が優勝。再十両の豊ノ島は最後まで優勝争いに加わった。カムバック賞をあげたい。前半戦は炎鵬、翔猿らが大きな相手を前に技能の限りを尽くして勝ち進んだが、終盤に失速したのは残念。しかしやはり小兵の照強は最後まで失速することなく優勝争いにった早く幕内に上がりその気の強さを多くのファンの前で披露してほしいものだ。
 やはり横綱大関のほとんどが休場ないし不調というのは盛り上がりに欠ける。そういう意味では優勝こそ逃したけれど、高安はよく場所を支えたと思う。しかし高安一人ではやはり苦しかった。貴景勝ら若手の活躍に救われたが、少し残念な場所になってしまった。来場所は先場所のように横綱大関が勢ぞろいして盛り上げていってほしいものだ。
 

(2018年9月23日記)


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