大相撲小言場所


平成三十一年初場所展望〜進退かかる稀勢の里〜

 貴ノ岩が付け人に暴力をふるい、引退。あの一連の出来事の着地点がこんなところになったとは、なんともやりきれない思いだ。再起の場所での拍手を貴ノ岩はどう聞いていたのだろうか。ただ、気にかかるのは一連の事件で明らかになったモンゴル力士の上下関係の強さ。強ければ弱いものには服従を強いることができるという感覚があるのではないか。こういった文化的な違いを今後への教訓としてもらいたい。
 さて、初場所である。今場所の一番の商店が貴景勝の大関挑戦ではなく、横綱稀勢の里の進退問題であるというのは寂しい限りだが、稀勢の里も相当の覚悟を持って場所に臨んでいることだろう。横審の稽古総見ではスタミナ不足を指摘されたが、その後貴景勝を稽古場で圧倒するなど、調子をあげてきているようだ。稀勢の里の場合、メンタル面での課題があるから、先場所のように初日に苦杯をなめると引きずって連敗をする可能性は高い。そうなると引退の二文字もちらついてくることだろう。
 白鵬と鶴竜は今場所は出場。そういう意味では稀勢の里にかかる精神的負担はかなり少なくなる。万全の調整を見せる白鵬は平成最後の国技館ということで気合も入っているようだ。
 そこに挑むのが先場所優勝した貴景勝。大関につながる場所にするかどうかは対横綱大関戦の結果次第であることは明白だ。先場所の優勝がフロックでないことを証明してほしい。
 初優勝に挑む高安は場所前にインフルエンザが発症して、稽古が十分にできなかった。いちかばちかのぶっつけ本番でどこまでもたせられるか。栃ノ心は右太ももの肉離れのため十分な稽古ができなかった。こちらも多くは望めない。
 注目したいのは御嶽海。ふりだしにもどった大関昇進に向けて出直しの場所となる。ここからどう巻き直していくかに注目している。
 2場所ぶりに横綱大関がそろう場所。途中休場することなく全員による優勝争いを見せてもらいたいものだ。

(2019年1月12日記)


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