大相撲小言場所


令和二年初場所展望〜大関復帰をかける高安〜

 今場所はまず白鵬に注目したい。横審の稽古総見でも大栄翔相手にわざと張り手や勝ちあげを見せつけ、「横綱は勝たなければ意味がない」と正当化していた。もと大乃国の芝田山理事は「反則でないのだから注意しようがない」と黙認。となれば、若手は張り手やエルボースマッシュを繰り出す隙を狙いひと泡吹かせるくらいの意気込みで向かっていってほしい。
 休場明けの鶴竜は、師匠の死に伴い移籍した陸奥部屋の後輩力士霧馬山の存在が刺激となっているようなので、とにかく故障なく15日間取り切ってほしい。横審が白鵬にばかり注目しているから目立たんけれど、ここらでしっかりと相撲を取らないと引退勧告もあり得ると思うよ。
 大関陣では貴景勝が怪我をほぼすべて直したので、優勝争いが期待できる。カド番の豪栄道がもし負け越して陥落することになると、4場所続いての大関陥落という不名誉な記録になる。ここは古参大関の意地を見せてほしい。また、大関から陥落した高安も場所前に貴景勝といい稽古をしていたというから、一場所で大関に復帰というのも期待できそうだ。
 次期大関候補の筆頭に挙げられる朝乃山は場所前にもと稀勢の里の荒磯親方に稽古をつけてもらって、なかなか自分の形にならせてもらえず苦労したという。もと横綱とはいえ引退して髷も落とした親方に歯が立たないのはちょっと情けないけれど、自分の弱点をしっかり把握して修正できれば、本場所の土俵は期待できる。御嶽海が平幕に下がった分、浮上してきたのが阿炎。昨年は六場所すべて勝ち越したが、それだけ地力がついてきているということのあらわれだろう。ただし、二けた勝利がない分小結に留め置かれてしまった。しかし師匠譲りの突っ張りがもっと回転速く繰り出せるようになればさらに上を狙えるだろう。
 平幕に下がった御嶽海は、正念場を迎えている。痛みに弱いという弱点がもろに出てしまった以上、痛みに耐える精神力を磨いていってほしい。
 大栄翔が新三役。阿武咲、明生らと並ぶ突貫小僧ぶりは立会いの威力がつよくなればおもしろい存在だろう。炎鵬も幕内上位進出で三役力士との対戦圏内に入った。勝敗は別にして、自分の相撲がどれだけ通用するか力いっぱい取り切ってほしいし、楽しみだ。
 十両では照ノ富士がついに関取に復帰。膝の古傷次第なので、調子が良ければ幕内復帰の足がかりにしたい場所となろう。
 一応優勝争いの本命は白鵬となるけれど、あの立ち合いに慣れられたら、かえって体勢を崩してしまうことになる。北の富士さんは貴景勝が優勝するのではと稽古を見ていて言ったという。今場所も誰が優勝してもおかしくない混戦を期待したい。

(2020年1月11日記)


目次に戻る

ホームページに戻る