大相撲小言場所


秋場所をふりかえって〜正代、初優勝で大関昇進へ〜

 今場所は両横綱が全休。大関朝乃山が初日から3連敗。中日で2敗で貴景勝、正代、照ノ富士、霧馬山、高安、琴勝峰、翔猿、若隆景、阿武咲の9人がトップで並走するという大混戦に。審判部が相星の力士から当てていく取組編成をし、9日以降は毎日1人ずつ減っていくというような形になり、13日目に正代が貴景勝をつき落し、翔猿と2敗で並ぶ。14日目、貴景勝が翔猿を下し、正代が朝乃山に圧勝。ついに正代が単独トップに立ち、千秋楽、翔猿に押しこまれながらも土俵際で突き落として初優勝を決めた。
 場所を盛り上げたのは新入幕の翔猿。十両時代とは打って変って立ち合いから徹頭徹尾押しまくり、隆ノ勝戦では立ち合いで立ち遅れたものの引っ掛けで土俵にはわすという技巧も見せ、千秋楽まで優勝争いに残った。敢闘賞だけではなく、技能賞も無条件で出すべきと思ったが、なぜか千秋楽の正代に勝たないともらえないことになっていて、これは圧倒的に不利。上位との対戦がなくても新入幕で10勝すれば無条件で敢闘賞は与えられるように最近はなっているだけに、それと変わらない評価はおかしい。殊勲賞でもよい。二つは出すべきだった。
 審判部と記者クラブのしぶちんぶりは、やはり最後まで優勝争いに残った若隆景や阿武咲に何もなかったあたりでここに極まった。若隆景には技能賞を、阿武咲には敢闘賞を出してもよかったのでは。
 初日から3連敗の朝乃山は4日目から10連勝して気を吐いたが、最終盤ではまったくいいところなく敗れた。貴景勝も翔猿を下して面目は立ったが、正代戦で圧倒されてしまった。両大関が正代の壁になれなかったのは大きい。
 とにかく休場の多い場所で、両横綱をはじめとして関取13人が休場。優勝争いにかんでいた霧馬山や照ノ富士まで休場で脱落したのは残念だった。
 七月場所との間が短かったため、オーバーホールが難しかったというのもあるかもしれない。また、玉ノ井部屋のように新型コロナウィルス感染症が出たため部屋全員が休場という事情もあったが。
 正代は今場所は本来大関昇進への足固めの場所と位置付けられていたが、優勝したために来場所は一気に大関昇進となる。三大関から誰が横綱に昇進できるか。現在の両横綱が休場続きなだけに、次の横綱を待望する声も大きくなってくることだろう。
 混戦ということで、優勝争いが面白かった場所であったし、特に新入幕でこれまでの殻を破った翔猿の活躍は見ていて毎日が楽しかった。
 十両では幕内再昇格を狙う千代の国が14勝で優勝し、来場所の再入幕も濃厚。怪我の多い力士だが、見ていて気持ちのよい相撲を取る。小兵旋風に加わらんと勝ち越した翠富士もまたいずれ幕内で旋風を起こしてくれるのではないかと期待の持てる場所だった。

(2020年9月27日記)


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