今場所も、いや今年も照ノ富士の年になるだろう。昨年の安定した相撲を見ていたら、照ノ富士が他の力士を大きく引き離していることは明らかだ。辛うじて貴景勝がついていっているが、以前は五分五分だったものが、今は七分三分くらいになっているように感じられる。例えば土俵際に追いつめられても、照ノ富士は意識して相手の力を受け、出方を読んで反撃に転じている。貴景勝は自分の形にならないと勝てない。その差はかなり大きい。さらに同じ大関でも正代は明らかに自分の持ち味を見失ってしまっている。大関らしい相撲を取ろうとして、型を崩してしまったという感じだ。
さて、それに続く力士は誰か。実は御嶽海がここまで2場所続けて二桁勝利をあげていて、星勘定では今場所13勝すれば大関昇進の条件を満たすことになる。しかし伊勢ヶ浜審判部長は「全勝優勝なら大関」と明言している。大関に昇進する力士というのは、昇進直前の場所などはもう既に大関らしい相撲を取っている。現状では御嶽海はただ関脇が白星を積み重ねているだけで、大関という雰囲気を全く漂わせていない。ひとつには優勝争いにからむことがないということもあるし、さらには照ノ富士に勝つなどというような派手な活躍をしていないということがある。優勝争いから早々と脱落しているのになんだかしらぬが13勝したので大関、というのでは、またもやふがいない大関を一人増やすだけだろう。
伊勢ヶ浜親方が「全勝優勝」という条件を出したのは、優勝争いをし、かつ照ノ富士にも勝たないと大関とは認められないよということなのだと私は理解している。
では、次の大関候補は誰か。阿炎が先場所のような相撲を今場所も取り、優勝争いにからんでいるような状況だとしたら、今年中に大関昇進というのもあながち夢ではないだろう。また、隆の勝がもう一つ化けてくれたら大関候補としてあげられることになるのではないか。スピードと力を兼ね備えた大栄翔や阿武咲は押しずもうならではのムラがあり、安定した成績は望めまい。
そうなると、琴勝峰や王鵬、豊昇龍あたりに期待がかかってくるが、彼らが大関候補としてその名が上がるのは2年後くらいになるか。ここらあたりの名をあげなければならないほど、大関候補は少ないのだ。
今場所はまず御嶽海の序盤の相撲に注目したい。ここで取りこぼすようだと、大関候補からもその名を消さなくてはならなくなるだろう。
とにかく照ノ富士の牙城を崩す力士が出てくることを期待したい。
幕内の英乃海と新十両の紫雷ガ違法賭博場に出入りしていたことで師匠の木瀬親方が休場させた。他にも出入りしている力士がいるという話もあり、協会は現状ではまだ正式な処分は下していない。もと貴闘力の大嶽親方や大関琴光喜が野球賭博で解雇されたことや、木瀬親方が暴力団関係者にテレビに映りやすい席を融通してしばらく部屋を閉鎖させられたことなどの教訓はもう忘れ去られたのだろう。紫雷は苦労してやっとつかんだ十両の座を、一度も土俵に上がることなく手放してしまうことになった。事実関係が公表されていないので現状はなんとも言いようがないけれど、野球賭博の時のように天皇賜杯なしの場所ができてしまう可能性もある。コンプライアンス委員会はちゃんと機能しているのだろうか。まったくなんとも残念で仕方がない。
(2022年1月8日記)