大相撲小言場所


令和四年秋場所展望〜コロナ休場への新対策〜

 先場所は逸ノ城の堂々たる優勝、と書きたいところだが、優勝争いをしていた力士の中からも部屋に新型コロナ感染症で陽性になったものが出て無念の休場となった力士もおり、その中から優勝力士が出ていたかもしれず、しかも終盤は割を組むのにも苦労するほど大量の休場者が出る羽目になってしまった。
 協会はコロナ休場の力士で勝ち越しや負け越しが決まってなかった力士は番付据え置き、皆勤の力士は大きく番付が上下動することになった。命拾いしたのはカド番大関の御嶽海が大関の座に残り、今場所もカド番として土俵に上がることになったということか。審判部の苦心の番付編成は妥当なところ。
 さらにコロナ休場の大量発生を奇貨とし、新たな対策が立てられることになった。新型コロナウィルス陽性者が出た部屋は一律休場というのは変わらないが、陰性の力士は3日間の休場で土俵に戻れるとし、陽性者も7日間の隔離期間を経たのちに再出場を可能にした。これで感染拡大を予防した上に先場所のような大量休場をなんとか阻止できそうだ。
 ただ、陰性でも3日間の休場は免れえず、今場所もコロナウィルス感染によって優勝の行方が左右されることにはなるだろう。したがって、優勝者の予想は非常に立てにくい。
 カド番大関の御嶽海が今場所はどのように体調を整えて臨むか。逸ノ城は今場所も優勝争いに加われるか。正代は先場所途中から見せた強さを序盤から見せられるか。新関脇の豊昇龍は大関候補に名乗り上げられるか。朝乃山は全勝優勝すれば来場所は関取に復帰できる幕下15枚目に番付をあげたが、果たして一気に関取復帰がかなうか。
 私はこれらが今場所の注目点と思っている。コロナ禍だけは防ぎようがないが、協会の対策が実るかどうかにも注目したい。
 期待の力士は豊昇龍と霧馬山、そして先場所好調の中球場を余儀なくされた琴ノ若。琴ノ若も大関候補として名前があがることになるだろう。それくらい場所ごとに力をつけてきている。
 何にせよ、なるべく休場力士が少ない場所になってほしい。新型コロナウィルス感染症はまだまだ治まったとはいえず、今後も優勝の行方を左右することになるだろうと思われる。それだけに、新対策の成果が一番の注目点となるのではないか。それくらい、先場所の大量休場は相撲ファンにとって興ざめとなったのである。

 もと関脇の魁聖が引退。幕下陥落を機に土俵から去ることになった。馬力は幕内随一。しかし緊張すると力が出なくなるタイプで、その怪力を利して下位では大勝ちしても上位では星があがらないという場面も少なくなかった。勝つときの豪快さと負ける時の落差は巨漢力士特有のものだったが、誠実な土俵態度は非常に好感のもてる力士だった。ブラジル出身ということで支度部屋で相撲記者にサッカーの話題を振られると、「ブラジル人がすべてサッカーファンではないよ」と答えたエピソードが印象に残っている。誠実で嘘のつけない人柄は、友綱親方として後進の育成をする際にも生かされることだろう。お疲れ様でした。

(2022年9月10日記)


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