大相撲小言場所


夏場所を振り返って〜照ノ富士、復帰場所を優勝で飾る〜

 中盤までは、照ノ富士、明生、朝乃山が優勝争いを引っ張った。9日目に明生が動き回って照ノ富士に相撲を取らせず寄り切り、1敗で並んだ時は、今場所の優勝争いも混とんとしてきたと思わせた。しかし、照ノ富士は後半になってもスタミナ切れを起こすことなく、14日目に大関昇進を濃厚にした霧馬山に食らいつかれながらもよく辛抱して下し、優勝を決めた。明生は10日目に北青鵬に敗れると、それで緊張の糸が切れたかのようになり勝てなくなってしまった。それでも優勝した照ノ富士を下したということで殊勲賞を受賞。再入幕ながら11日目まで1敗で並んでいた朝乃山は、苦手の大栄翔にあてられて2敗目を喫し、照ノ富士にも歯が立たず3敗に後退した。それでも最後まで気持ちを切らさずに12勝。優勝に次ぐ勝ち星をあげた。今場所を盛り上げた功労者だと思うが、三賞はなし。もと大関だからこれくらい幕内下位で勝って当たり前ということか。そういうことは関係なく、その場所を盛り上げた力士に報いることはできないものか。
 霧馬山は11勝をあげて、昇進の目安である三役で3場所33勝を超える34勝をあげ、技能賞。ただし、相撲内容には大関らしさはわずかしか見えなかったのが残念。自分よりも小柄な錦富士に対し立ち合い変化し、同体取り直し。その一番も逆方向に変化。それで勝っても大関の値打ちはない。正代に敗れた相撲も立ち合いの変化を見切られ、まともに引いて呼びこみ、なすすべなく寄り切られた。大関経験者相手にいいところなし。ただ、終盤の貴景勝と北青鵬に勝った相撲は力強さもあり、大関にふさわしい内容だったが、照ノ富士には善戦したが勝てず、千秋楽の豊昇龍戦に至ってはどちらが大関かわからないほど一方的な相撲で敗れた。豊昇龍は11勝。大栄翔も途中まで優勝争いにからみ10勝。若元春は千秋楽、大栄翔戦で一方的に突きまくられて負けたが相撲内容は一段とよくなり技能賞。大栄翔にも何か賞があってもよかった。来場所の成績次第では豊昇龍、大栄翔、若元春3人同時昇進という話が出てもおかしくない成績を残している。
 他に目立ったのは8勝に終わったが肩越しにまわしをとれば懐の深さを見せつけた北青鵬あたりか。
 十両では1敗同士で豪ノ山と落合が優勝決定戦。豪ノ山が力強い相撲で落合を下した。来場所は幕内中位での新入幕となるだろう。今場所のような出足の効いた相撲を取って活躍してほしい。また、落合も新入幕の可能性を残している。どれだけ幕内で力が通用するかに期待したい。
 なによりも称賛すべきは照ノ富士。膝の怪我は完治することはないという。そのような状態で、相撲が取れるようになるまでリハビリにつとめ、出場したからには勝たなければならないと、横綱の責任を全うした。8度目の賜杯の重みはまた格別だったに違いない。
 貴景勝は勝ち越しがやっと。それでもなんとか大関陥落を免れた、その気力には敬服。万全な状態で相撲を取らせたい。
 とはいえ、一横綱一大関という番付なので、霧馬山は大関にあげるべきだろう。ただ、今場所のような勝つために消極的な相撲を取るようであれば短命大関となるだろう。そうならないよう、もっと出足の効いた相撲を取ることを願っている。

 もと大関栃ノ心が場所中に引退を発表。初日から全盛期の力強さは見る影もなかったので、引退は近いと感じていたが、やはりそうなった。しかし、怪我で三役から幕下まで落ちながら力強い相撲で復帰し、一気に大関まで駆け上がった時の強さは素晴らしかった。特に怪力でまわしをとり、吊り寄りで圧倒する相撲は強豪大関といってよい。ただ、膝の怪我の悪化で大関から陥落し、ついには十両まで落ちてしまったのを見ているのは辛かった。国籍はジョージアのままなので協会に残ることはできず、今後はジョージアと日本をつなぐような仕事をしたいという。できれば相撲解説者としてどこかのスポーツ新聞や相撲雑誌に登場してほしいし、NHKでレギュラー解説者として相撲の世界に関わっていてもらいたい。あるいは春日野部屋にコーチとして残り、怪我をして落ちた力士にケアをするような役割を果たしてもらってもよい。国籍が日本になくても、大関以上に昇進した力士は協会に残れるというシステムにしてほしいと以前から思っていたが、このような形で大関経験者を相撲の世界から離してしまうのは多いなる損失だと思う。
 それはともかく、強い時のあなたの相撲は無敵でした。お疲れ様でした。しばらくは膝の治療に専念してください。

(2023年5月28日記)


目次に戻る

ホームページに戻る