大相撲小言場所


令和五年秋場所展望〜新大関豊昇龍に続くのは〜

 豊昇龍が大関に昇進し、霧島、貴景勝と3大関が番付に載ることになった。豊昇龍は連覇を狙うところにいるが、新大関の場所というのは昇進からいろいろと行事が増え、15日間もスタミナがもたないことが多いので、10勝すれば合格としたい。霧島は先場所初日から休場し、途中から出場したものの勝ち越すことができなかった。それでも場所前の稽古では大関昇進前の力強さを取り戻したようなので、優勝争いにからんでくれそうだ。心配なのは貴景勝。どこまで怪我を治せたか。本来の当たりの強さが戻っていなければ、苦戦は免れそうにない。まずは勝ち越しを目指してほしい。
 横綱照ノ富士は腰の痛みが完治せず今場所も休場。このままずるずるといくとは思えないが、だんだん後がなくなってきている感じがする。故障が完治するのを祈るのみ。
 となると、先場所大関昇進を逃した大栄翔と若元春、そして新関脇の琴ノ若の存在がクローズアップされそうだ。特に大栄翔は今場所の星次第で大関の声がかかる可能性を残しているので、大願成就のため、出足をきかせた相撲を取ってほしい。
 苦労人錦木が新小結に昇進。先場所前半のような相撲を取り続けることができるか。幕内上位に番付を戻してきた朝乃山の存在にも注目したい。大関復帰の足がかりになる場所になるかどうか。上腕の怪我の回復度がどれくらいなのかによって成績も変わってくるだろうが。
 注目したいのはもと大関の正代。ここ2場所、勝ち星はあがっていないが、本来の強さを取り戻しつつある。大関陥落の原因となった怪我の回復次第では、優勝争いの台風の目になりそうな気がする。
 先場所新入幕で大活躍した伯桜鵬は、肩の怪我を治すための手術で今場所から休場。十両に陥落した若隆元もまだ出場は難しいという。早く土俵に復帰して、また大暴れしてもらいたいものだ。
 楽しみなのは新十両。向中野改め天照鵬、石崎改め朝紅龍、大の里、高橋ら学生相撲出身の実力派が揃った。先場所の新十両の輝鵬ともども、早く幕内でその力を発揮してほしい逸材ぞろい。伯桜鵬の活躍に刺激を受けたことは間違いなく、近い将来、宮城野部屋と二所ノ関部屋の力士たちによる激しい優勝争いも見られるのではないかと期待している。
 とにかくまだまだ決め手に欠ける力士が多く、優勝争いは混沌としたまま。戦国場所はまだしばらく続きそうだ。

 もと幕内の明瀬山が引退。「パン種」とも称された張りのない独特の肉感のある体。また異様に細い足腰。やる気がないように見える所作など、独特の雰囲気を持った力士だった。それでも土俵際の粘りや時折見せる力強い相撲を見ると、なおさらその存在の不思議さを感じさせた。入門し、幕下付け出しで土俵に上がった時は片足を後ろに引く不思議な立ち合いで勝っていて驚かされたが、自分でその相撲を改造し、正対して立ち合うようになった。そういう研鑽も積んでいたのに、あごの怪我で幕下落ちしたのは不運だった。とにかく独特の存在感のある、どこか目の離せない力士だった。今後は井筒親方として後進の育成にあたるという。本人のような独特な存在感のある力士を育てるのは難しいだろうが、個性的な力士を育成してほしい。長い間お疲れ様でした。

(2023年9月9日記)


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