大相撲小言場所


令和五年九州場所展望〜貴景勝が連覇したら……〜

  先場所は11勝4敗ながら貴景勝が優勝した。内規では、連続優勝またはそれに準ずる成績をあげた大関は横綱昇進、ということになっている。もし今場所貴景勝がまた11勝で優勝した場合、横綱昇進はあるか。私は、内規に従って横綱に昇進させなければならないと考えるものである。ただし、一番大切な条件である「品格力量抜群」であるかどうかというと、立ち合いの変化で優勝した先場所の相撲や、押し相撲にありがちな不安定さ、それに常にどこか怪我をしているという状況を考えると、果たして横綱にふさわしいかどうか、疑問符をつけざるを得ない。今の貴景勝の相撲は、横綱の風格を備えたものかどうか。こればかりは昇進してからどう化けるかによると思われる。さて、もし貴景勝が低いレベルであっても優勝した場合、審判部や横綱審議委員会がどう判断するか。長年相撲を見てきたファンの一人として、非常に興味深いものがある。優勝回数を重視するか、相撲内容を重視するか。今後、貴景勝に続く力士たちの昇進基準にも関わってくる問題だろう。
 場所後に大関昇進の可能性を残しているのは大栄翔。星勘定だけなら、14勝すれば目安となる3場所合計33勝という目安に達することになる。ただ、大栄翔は冷静さを書いて前のめりになり引き落とされる相撲をとることがあるので、14勝は難しいのではないかと思われる。ただ、実力派大関クラスに達している。14勝に達しなくても優勝したり優勝同点で決定戦に出たりした場合、大関の声がかかってもおかしくはない。上半身に力が入り過ぎず、常に出足を効かせた突き押しを続けられれば、優勝の可能性は十分あるし、大関昇進の芽も出てくると思う。
 横綱照ノ富士は今場所も休場。となると、霧島や豊昇龍ら新しい大関たちにかかる期待が大きくなってくる。大関陣が優勝争いを引っ張り、そこに大栄翔や琴ノ若らがからんでくると非常に面白くなるだろう。もと大関の正代や御嶽海がかなり復調しているので、本来の実力を発揮するのではないか。ぜひ大関経験者の意地を見せてほしいものだ。
 元大関というと、三役復帰が近くなっていた朝乃山が初日から休場。ただ場所の途中で出場する可能性もあるので、大関陣は警戒しておいた方がいいだろう。遅咲きの北勝富士や錦木といった実力者も調子に乗ってきたら手強い相手になりそうだ。ついに幕内に復帰した友風、新入幕の東白龍、美ノ海、狼雅、北の若らがどれだけ幕内で通用するかも楽しみ。特に大器と期待されている北の若は十両時代はもたついていた感があり、それだけに幕内では思い切った相撲で実力発揮するのではないか。
 若隆景がやっと土俵に復帰。幕下6枚目の位置は、関取復帰の可能性のある地位だけに、手術で故障が完治したとすれば、注目の的になることは間違いあるまい。琴勝峰の弟である琴手計は相撲の方が兄よりもいいので、十両昇進の可能性を秘めている。尊富士とともに、将来有望なホープとして目が離せなくなってきた。
 横綱不在を忘れさせるような熱戦を期待している。

(2023年11月11日記)


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