大相撲小言場所


初場所を振り返って〜照ノ富士復帰場所で優勝、琴ノ若は大関へ〜

 照ノ富士が久々の土俵復帰。やはり横綱の出場は場所が締まる。横綱土俵入りがあるというだけで雰囲気が違う。ただ、2日目に若元春に攻められると残ることができず寄り切られ、攻められたときの膝の不安を感じさせた。7日目には正代に寄り倒され、前半戦で2敗を喫し、舞の海さんは「10勝できれば合格」と解説で言ったくらい不安はつきまとっていた。横綱昇進のかかった霧島は圧倒的な強さは感じさせないものの4日目に翠富士に肩透かしで敗れ、中日に翔猿に押し出されるなど小兵の技能派に翻弄される。
 優勝争いをリードしたのは新入幕の大の里。連日馬力のある押しと寄りで3日目に阿武咲にはなすすべもなく押し出されたが、9日目まで1敗で引っ張った。大関を狙う琴ノ若も連日勢いのある相撲で勝ち進み、6日目に若元春にうまくいなされて押し出されたのみ。10日目、1敗で並ぶ大の里と対戦。緊張した大の里は立ち合いの踏み込みも浅く琴ノ若が寄り切って単独トップに立つ。大の里は大関豊昇龍、横綱照ノ富士と新入幕ながら上位と当たり、格の違いを見せつけられるように連敗し、優勝戦線から脱落した。ただ、13日目からはまたもとの相撲を取り戻して11勝をあげ、敢闘賞を受賞。ただ新入幕で10勝以上したから三賞、というだけではなく、場所を盛り上げた功績は大きかった。琴ノ若は13日目に照ノ富士に寄り切られて2敗。
 豊昇龍は序盤に豪ノ山、阿炎に連敗したが、中盤持ち直す。13日目、2敗同士で霧島と当たったが、二枚蹴りに敗れ、翌日から休場。場所前から怪我に苦しみながら優勝争いにからんでいたのは立派だった。14日目、照ノ富士は豊昇龍の休場で不戦勝。優勝を賭けて霧島と琴ノ若が当たるが、琴ノ若は2度のつっかけ待ったのあと、出足よく攻め立てのど輪からいなして霧島を捕まえると寄り切って優勝戦線に残る。千秋楽、琴ノ若は翔猿を一蹴。照ノ富士は霧島を圧倒し、優勝決定戦に。決定戦は本割以上に白熱した相撲となり、うまく巻き変えた照ノ富士がもろ差しから琴ノ若を寄り切って、9度目の優勝を成し遂げた。琴ノ若は技能賞。
 殊勲賞は照ノ富士と琴ノ若に土をつけて場所を盛り上げた若元春。大関昇進目前まで行った時のうまさと強さを兼ね備えた相撲をとり、三役復帰は濃厚。新入幕の島津海は9勝で千秋楽に臨み、勝てば敢闘賞というところまで来たが、明生に突き落とされて三賞を逃した。
 横綱と2大関、そして大関昇進のかかった関脇が最後まで優勝争いをし、そこに新入幕の大型力士がからむという番付の「格」通りになった場所で、相撲内容も毎日白熱。曲者の宇良は千秋楽に竜電を伝え反りに破って国技館を沸かせ、師匠の死からか序盤連敗をした阿炎は中盤以降連勝して勝ち越す。非常に面白い場所となった。
 残念だったのは大関貴景勝が序盤でまたも故障し休場、高安もいい動きをしていたがまたも途中休場。7連勝と快調に飛ばしていた朝乃山が中日の玉鷲戦で負傷して休場。朝乃山は4日間の休場をはさんで再出場し2連勝して気を吐いたが、怪我がなければ優勝争いに残っていただろうから、もったいなかった。負け越したものの翠富士は肩透かしも冴えて観客を沸かせた。
 今場所は三賞も比較的順当に決まった。ただ、琴ノ若は優勝すれば殊勲賞などというハードルを設けず、せめて決定戦に出られれば殊勲賞としてもよかったと思う。
 十両では新十両の尊富士が9連勝し、13勝して圧倒的な強さで優勝。また楽しみな力士が地位をあげてきた。
 幕下では若隆景が全勝で来場所の関取復帰を確実にした。一気にもとの位置にかけあがってほしい。
 年の初めから充実した場所だった。琴ノ若は大関昇進を確実にし、来場所は4大関となる。新大関の姿をじかに見られそうで、楽しみだ。

(2024年1月28日記)


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