大相撲小言場所


令和六年春場所展望〜新大関琴ノ若昇進、宮城野部屋の危機〜

 春場所を前にして、朗報と悲報がそれぞれ大きくとりあげられることになった。朗報は琴ノ若の大関昇進である。初場所、優勝を逃したものの13勝をあげた琴ノ若は文句なしの昇進。なかなか型が決まらなかった力士の一人だったが、ここにきて出足の良さと体の柔らかさで相手を圧倒する力がついた。今後はその良さを磨いてさらにその上まで狙ってほしい。新大関の今場所は父のしこ名でもある琴ノ若の名を大関のしこ名として残し、夏場所からは琴櫻を襲名する予定という。それだけに今場所の番付表は貴重なものとなるだろう。たとえ本物を入手できなかったとしても、「相撲」誌の付録についているレプリカだけでも持っていたいものだ。これで大関は貴景勝、霧島、豊昇龍と4人となる。ここから横綱に昇進する可能性が高いのは、琴ノ若ではないかと思う。霧島の相撲はまだ相手を圧倒する迫力に欠け、豊昇龍の相撲は土俵際の逆転が多く安定していない。貴景勝は今場所もカド番で、首の怪我とは今後もつきあっていかなければならず、安定した力を発揮するのは難しくなってきた。照ノ富士は早くもう一人上がってきてほしいとNHKのインタビューに答えて言っている。相撲ファンとしても、東西に横綱が並んでいてほしい。
 優勝争いは先場所優勝の照ノ富士を軸に、今場所も大関陣がからむ形になるだろう。若元春が先場所非常にいい形になってきたので、ぜひ優勝にからんできてほしいものだ。
 新入幕はスピード出世の尊富士。一気に上がってきた勢いをどれくらい発揮できるか。先場所旋風を巻き起こした大の里や、三役復帰目前の朝乃山にも期待がかかる。
 若隆景と伯桜鵬と北はり磨が再十両。若隆景と伯桜鵬は一場所でも早く再入幕を果たしてもらいたい。ベテラン北はり磨は久々の関取としての土俵でどれだけ暴れられるか。
 さて、悲報だが、宮城野部屋が消滅の危機にさらされることになった。北青鵬による若い者への暴力事件が発覚したわけだが、単なる暴行というだけでなく、瞬間接着剤で財布を貼りつけたり、まわしを丸めて棒状にしたものでたたいたり、睾丸に張り手をしたりと悪質なものばかり。師匠の宮城野親方は稽古が終ると自宅に帰らなければならない仮住まい。それでも暴行を知った時に北青鵬に指導し、協会に届ければよかったものを、どちらもせずに被害者の協会への訴えで発覚という師匠としてはお粗末極まりない次第。現在、一門から玉垣親方が師匠代行として指導にあたり、宮城野親方の姿勢次第では部屋は解体され、親方と弟子はばらばらで伊勢ヶ浜一門の他の部屋に移籍ということになる可能性もある。
 木瀬部屋が一時北の湖部屋に吸収され、消滅していたことがあったが、はたして宮城野部屋はどうなるのか。せっかく伯桜鵬、輝鵬、天照鵬など有望力士を多く抱えているのだから、宮城野親方は名跡をもと石浦の間垣親方と交換して部屋を存続させ、師匠としてのあるべき姿を名伯楽である伊勢ヶ浜親方について学び、再度師匠として復帰してもらいたいと思う。部屋の創設者は吉葉山。その後、広川、竹葉山がつないできたのに、大横綱白鵬がそれをつぶしたとなってはシャレにならない。正式決定は春場所後ということになるが、なんとか部屋存続の方向で解決していってほしいものだ。北青鵬の引退はいたしかたなし。再十両の伯桜鵬の相撲にも影響が出るだろう。炎鵬は今場所も休場だが、これがきっかけで引退ということにもなりかねない。それだけは避けてほしいのだ。

(2024年3月9日記)


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