大相撲小言場所


令和六年名古屋場所展望〜大の里に大関昇進のチャンスも~

 先場所新三役で優勝した大の里は関脇に昇進。好成績で連続優勝すれば、春場所も平幕上位で優勝争いをしたこともあり、一気に大関昇進という可能性もある。先場所の優勝で未成年力士への飲酒強要の不祥事は忘れられた形になったけれど、その件がただの謝罪に終わっただけで許されていいものか。審判部はもし大関昇進の議題が出た時に、その点も加味して判断してもらいたい。これは決して大の里に大関に昇進してほしくなくて書いているのではなく、大関という地位に対する責任をとれるような力士になってほしいという願いがあるからだ。
 ただ、上位陣はまだ大銀杏も結えない力士にそう簡単に大関昇進は許さない気概を見せてもらいたい。特に横綱昇進を目指す琴櫻には、それだけの技量を示してもらいたい。豊昇龍は序盤の取りこぼしをなくせばもっと上を目指せるだろうから、ポイントは初日。カド番の貴景勝は出場して大関の座を守らねばならない。勝ちたい気持ちが勝って上半身だけ前に出るような相撲を取ると大関陥落も考えられる。下半身主導の出足を生かした相撲を取り切ってほしい。
 横綱照ノ富士は出場するが、先場所のように下がると踏ん張れないような状態でないことを祈る。大の里のスピード出世の壁として立ちはだかるのは横綱でなくてはならない。
 大関から陥落した霧島は10勝すれば来場所は大関に返り咲ける。ただ、先場所までのような消極的な相撲を取っていては復帰は難しい。大関に昇進した時のような積極的な相撲を見せてもらいたい。新しく師匠になったもと鶴竜の音羽山親方の指導力に注目したい。
 新三役の平戸海はたたき上げの正統派。こういう力士に注目が集まるのはうれしいが、果たして序盤戦の上位陣総当たりでどれくらい力を発揮できるか。楽しみな力士の一人だ。
 幕内に戻ってきた若隆景、と遠藤は先場所のような本来の取り口を続けていれば、すぐにでも三役に戻れるだろう。全休で下位に落ちた朝乃山も加えて、幕内前半戦の取り組みが楽しみになってくる。
 全休で十両に陥落した尊富士は今場所も休場。途中出場の可能性もあるというが、怪我が治りきらないままの出場だけは避けてほしい。
 序ノ口まで下がった炎鵬が久々の土俵に上がる。一時は日常生活もあやぶまれる重症だったと聞く。焦らず、再発しないようにしてほしいが、早くまた大銀杏姿を見たいという気持ちもある。とはいえ、勝敗表に炎鵬の名が戻ってくるというだけで嬉しいではないか。
 今場所で現在の愛知県立体育館での名古屋場所は終わり、来年からは新設の会場になるという。地元では「県体」の名で親しまれている会場だが、老朽化のために解体されるのでは仕方ない。そのためか名古屋のファンの前売り券の売り上げが伸びているという。ご当所力士たちの奮闘に期待したい。

 もと木村山の岩友親方が病死。まだ42歳と若く、残念である。幕下以下の中継の解説をよく担当していたが、和歌山出身らしい柔らかな口調が印象に残る。謹んで哀悼の意を表します。

(2024年7月13日記)


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