先場所優勝の横綱照ノ富士が糖尿病の悪化などで今場所また全休となる。万全の状態で出てもらいたいだけに、残念だ。となると、優勝争いの行方はまた混沌としてくる。
例えば、数字の上では、大の里は12勝すれば、三役で3場所通算33勝に届く。そうなると新大関、という事になる(らしい)。そんな数字だけで大関昇進云々というのはあほらしいと私は思っているのだが、おそらくNHKやスポーツ紙は大騒ぎするのだろう。私は、霧島のようにワンチャンスで大関に昇進するよりも、何度も壁に跳ね返されて挑んだ末に勝ち取らないと、ちょっと調子を落としたら陥落という事になってしまうと考えている。例えば出島や雅山などがそうだ。稀勢の里は33勝に達してなかったが、実力はもう大関と同等と判断されて昇進し、その座を長く保ち、ついには横綱に昇進した。協会としてスターが欲しいのはよくわかるが、大の里にはそのようなワンチャンス昇進はしてほしくない。
そのためにも先輩大関である豊昇龍と琴櫻には奮起を期待したい。どちらもいいものを持っているのに、つい自分の側の土俵で勝敗をつけたがる。前に出て、相手の側の土俵で決着をつける相撲を常にとるようになれば、その上、という話も自然に出てくるだろう。
また、厳しいけれども、貴景勝にも踏ん張ってほしい。稽古不十分の状態で土俵に上がるとのことだが、なんとか10勝をあげて大関にひと場所で復帰してほしいものだ。惜しくも大関復帰を逃した霧島は、ここから再び大関を狙ってもらいたいが、やはり前に出る力が不足しているだけに、そう簡単にはいかないだろう。
実力派の阿炎や大栄翔も大の里には壁となってもらいたい。宇良や翠富士、翔猿などの曲者の活躍も、毎場所同様楽しみだ。
新入幕は白熊と阿武剋。特に白熊はスピード出世してもおかしくないところを、壁に当たりながら幕内に昇進してきた。阿武剋の勢いも楽しみだが、白熊が一皮むけるのに期待している。
実は、一番期待している力士がいる。こつこつと実力を蓄えてきている平戸海である。大の里のような話題性に富んではいないけれど、もしかしたら大勝ちして見せるかもしれない。それだけの実力は蓄えてきていると思うのだ。
(2024年9月7日記)