先場所大関として初めて優勝した大の里が、今場所優勝すれば横綱昇進ということになる。ただ、先場所の優勝は12勝。優勝すれば文句なしに横綱昇進だが、優勝同点、もしくは準優勝となると13勝以上の成績は求められるだろう。体調は少し悪いらしく、場所前の一門の稽古には行かず、横綱総見では豊昇龍に苦戦したという。場所前の部屋の稽古で師匠の二所ノ関親方に稽古をつけてもらい、それなりに結果は出したというが、必ずしも万全の状態で本場所に臨むということにはならないようだ。しかね初日と二日目の相手は先場所苦杯をなめた若元春と高安。序盤からこういう割を組んだ審判部が大の里を試しているという感じがよく出ている。先場所の優勝決定戦で高安に苦手の左四つで右上手を取って勝った相撲が、どれだけ身についているかに注目して見てみたい。
優勝争いの横綱豊昇龍は、先場所、新横綱で途中休場。巻き返しに期待したいが、休場の原因となった右ひじの痛みはまだ残っているということなので、初日の若隆景、二日目の若元春戦でどれだけ回復ぶりを示せるか。
先場所、ぎりぎりでカド番を脱した琴櫻は初日はめきめきと力をつけてきている王鵬、二日目は実力者の阿炎と対戦。優勝した九州場所のような強さと自信を取り戻せているか。今場所こそ本来の力強さを取り戻してもらいたい。
三役に返り咲いた高安は、場所前に「大関復帰を目指す」と語ったという。ただ、巡業後にまた腰痛を再発したという。高安は腰痛さえ出なければ、大関から陥落もしなかっただろうから、心配である。
大栄翔や霧島、阿炎、玉鷲といった優勝経験者に加え、若元春、若隆景兄弟あたりが優勝にからんでくると面白くなる。
新入幕は嘉陽と栃大海。きびきびした動きの嘉陽とスケールの大きな相撲を取る栃大海は好対照。両者とも実力をつけての新入幕なので、敢闘賞を狙えるのではないか。
十両では草野が西の筆頭にまで番付をあげた。来場所の新入幕を目標にここまでの快進撃を途切れさせることのないように自分の相撲を取り切ってほしい。もと大関の御嶽海が十両落ち。このままずるずると行かねばいいのだが。若碇、琴栄峰ら伸び盛りの若手の活躍も楽しみ。新十両は宮城改め宮乃風、三田、夢道鵬。夢道鵬は王鵬の弟として話題を呼んでいるが、私はスビートと技巧を兼ね備えた宮乃風に注目している。
幕下上位に朝乃山や炎鵬が上がってきた。全勝すれば文句なしに再十両。そこまでいかずとも、関取復帰に期待を持たせたい。
幕内最高優勝争いの本命はというと、今場所もはっきりと誰とはいえない混沌状態が続いている。立ち合いの変化や安易な引き技といった相撲で優勝しても値打ちがない。どの力士も全力で自分の相撲を取り切ってほしい
(2025年5月10日記)