大相撲小言場所


夏場所を振り返って〜大の里、連覇を決め横綱へ~

 今場所は大の里の場所だった。優勝すれば横綱昇進というプレッシャーを感じさせない、もうすでに横綱に昇進したかと思わせる相撲を取り続けた。優勝争いでは中盤まで安青錦と伯桜鵬がついていったが、上位とあてられると力の差を感じさせ、脱落。横綱豊昇龍は序盤に王鵬と阿炎に連敗したが、そこから立ち直り、2敗でついていったが、12日目に霧島に不覚をとり、13日目に大の里の優勝が決まった。ただ、千秋楽は豊昇龍が意地を見せて大の里の全勝を阻んだ。大の里の来場所の横綱昇進は確実だが、東西の両横綱が切磋琢磨して土俵を盛り上げてくれることを期待させる一番だった。
 ふがいなかったのは大関琴櫻。まだ先場所の相撲を引きずっているかのようなあっけない負けが多く、8勝どまり。9勝どまりでも批判される地位だけに、来場所の奮起を期待したい。
 関脇の大栄翔は千秋楽に琴櫻を圧倒し10勝目をあげ、同じく関脇の霧島は11勝、小結の若隆景は12勝と、次の大関への起点となる場所となった。霧島と若隆景はそれぞれ技能賞。ただ、霧島は技能賞よりも横綱に土をつけた一番を評価して殊勲賞でもよかったと思うが、大関経験者ということで技能賞にまわったのか。
 38歳の佐田の海は下位ながら10勝をあげ、敢闘賞。速攻と前さばきのうまさは技能賞もの。敢闘賞では安青錦と朝紅龍が千秋楽に勝てばという条件付きで候補に挙がったが、安青錦は中盤まで優勝争いに加わって場所を盛り上げたのだから無条件で敢闘賞を出してもよかった。逆に朝紅龍は終盤に白星を重ねて浮上してきた感じなので、三賞候補に挙がったのは意外だった。ただ、きびきびとした相撲は見ていて気持ちがよく、どうせなら無条件で三賞受賞でよかったのではないか。
 伯桜鵬も終盤に崩れなければ三賞は確実とみられたが、どこか傷めたようで、失速して8勝どまり。それでも中盤まで突っ走ったのは新入幕の時の勢いを思い出させた。
 今場所は宇良が高安に伝えぞりで勝った相撲以外はらしさを見せられず、翠富士、翔猿とともに、今ひとつさえなかった。阿炎も今場所は実力を発揮できず。10勝した欧勝馬、阿武剋、金峰山も白星の数の割にはあまり目立っていなかった。
 十両では草野が筆頭で13勝をあげて優勝。12勝した若碇とともに、来場所の新入幕が期待される。草野の勢いがどこまで幕内に通用するかが見ものだ。
 とにかく、冒頭にも書いたように、今場所は大の里のための場所だった。体格のよい大の里の横綱土俵入りの姿が今から楽しみである。

 元小結の北勝富士が引退。全盛時は馬力のある押し相撲で優勝争いに絡んだこともある。額の生え際がが擦り切れるほど、徹頭徹尾、頭から突っ込んでいく相撲には迫力があった。平成から令和にかけて土俵を沸かせた実力者だった。怪我でずるずると番付を落としていったのが残念。今後は年寄大山として後進の育成にあたる。強い突き押し相撲の力士を育ててもらいたい。長い間お疲れ様でした。

(2025年5月25日記)


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