たちよみの会 私の好きな本
現在、第二夜(二巻)まででているこの現代怪談集、第一夜(一巻)は’90年頃扶桑社から刊行されたものの再刊である。百物語の形式を書籍で再現し、一冊に99話を収録する(一夜にして百の物語を語ると怪異が起こるとか……)。
内容は筆者が知人から聞いて集めた現代の怪談ということだが、場所も時期も特定できないようにぼかされたものもあるとはいえ、不思議な魅力を持って迫ってくる。
旧家の取り壊し工事で地下室のさらに地下に発見された不思議な――2畳の畳敷きをもっているものの、四方は白塗のしっくいと木の天井に閉ざされどこにも出入口はない。ただ一方の壁に日の丸を思わせる朱の丸い彩り――地下室、何故か複数の職業も境遇もまったく違う人々に目撃される共通の特徴を持った小人(灰色の僧服・頭巾をまとった老人等)、そして漫画家とり・みきがとりあげたことで有名になった「くだん」の目撃譚等々。
もちろん、筆者たちはこれらの話から、妖怪など心霊的な存在の実在を主張しているわけではない。ただ、そういう話があったということを取捨選択して記載しているだけである。自分の著書の半分をA・ピアスの怪談集で埋めている中岡俊哉氏とは違う。この本は怪談を怪談として楽しむ?読者のための本だ。
著者たちは、収集した怪談を無制限に文章にしたわけではない。因果、呪い、祟りのみで語られる話、探せば必ずあるであろう大災害に関連する話(例えば、阪神大震災)を除外している(少なくともそう主張している)。見識を示すものであろう。
(語りたくても記録のためのテープレコーダーがそのたび故障したり、どうしても取材のスケジュールがとれなかった等々のおまけ話もついていたりする。下手に踏み込まない方が身のためという事も世の中にはあるらしい)
参考文献 別冊宝島「怖い話の本」
(寿)