東西に分断された日本をデフォルメして描いた小説。腰巻には「衰退した文学の寝首を掻く問題小説」とあるが、上巻の感想でも触れたように、全てが中途半端で笑わせようとしているのか現代社会に問題提起をしようとしているのか判然としない。
しかし、なんだこれは。終盤、これまでの雰囲気とは一転してアクション小説のような展開を見せるのだ。それが作者の本領とみえて、そこだけ取り出せば妙に面白い。主人公が命を狙われた謎もそこで解明されるが、そこはスパイ小説だ。あれもこれもと詰め込んでつぎはぎになっている。
しかし、これをほめる人たちもいるんだな。なんでこう私にはなじまないのか、考えてみた。例えば、西日本の描き方があまりにもステロタイプであることもその一つか。カリカチュアライズするためにはそれなりの知識がいると思うのだが、芸能関係についてはよく調べてある。次期首相候補に杉本高文という名前がちらりと出てくるがこれは明石家さんまの本名だ。しかし、笠置シヅ子が首相をしたり吉本興業の一族が政権を握り続けているというのは、全国制覇を狙う現実の吉本興業への嫌悪からなのか。それならそれでいいのだが、どうも大阪文化に対し悪意をもっているとしか思えないような一面的な描写が続くと、うんざりしてしまう。
というのも、東日本では適材適所に政治家や有名人たちが配置されているのだ。この落差はいったいなんなのだろう。
この小説で書きたかったことはわかり過ぎるくらいにわかる。「気分はもう戦争」を活字でやりたかったんだろうなとも思う。あれは大友克洋の絵があったから成立したもだと思うんだが。活字でやるとこういうチグハグなものになってしまう。
壮大な失敗作。でも、人によっては面白いかもしれない。私には、どこがよいのかさっぱりわからなかった。
(1997年12月26日読了)