「NOBUNAGA」(柘植久慶)みたいな架空戦記かと思えば、さにあらず。本能寺の炎の中から魂魄だけが取り出され、信長とその小姓たちの霊がヨーロッパへ行き、オランダ独立戦争の軍師となって活躍する時代伝奇小説であった。
史実でスペインの無敵艦隊がイギリスに敗れた理由やオランダが独立戦争でとった作戦などを検証し、信長が実際にたてた作戦との共通点を探り当て、まるで本当に信長が軍師として戦ったかのように仕立て上げている。信長の軍師ぶりを描くだけではなく、本能寺の変から後の秀吉や家康の行動なども信長の霊を恐れての行動であるように描き、それなりに説得力を持たせている。そこらへん、ヴェテラン脚本家らしく手際がよい。辻真先あたりとの共通点を感じるのである。
(1998年1月24日読了)