読書感想文


夢埋みの里
封殺鬼 16
霜島ケイ著
小学館キャンバス文庫
1998年2月10日第1刷
定価514円

 前巻「影喰らい」は外伝的エピソードであったが、この巻から本編に戻った。新エピソードの主役は第1巻から登場している秋川家の当主、佐穂子。第1巻では高校生だった彼女も今は大学生。「マヨイガ」で天狗たちにより東北の守りが弱まり、羅喉と呼ばれる謎の悪鬼の復活が間近になってくる。今回は日本列島の守りの要、諏訪神社のある信州が舞台。
 佐穂子が鬼無里(きなさ)の一夜山で出会ったのは謎の一族。彼らは封じられた鬼女を守る特別な血統であった。しかし、鬼女は天狗の手により解放され、要石となる寺社を破壊しているのだ。鬼女の正体とはなにか。
 伏線が多く張られ、謎を多く残したまま続巻にバトンタッチとなる。「マヨイガ」に続くスケールの大きな物語になりそうである。ここまで巻が重なると、これまでの巻で多彩な登場人物一人一人の人間像を深く掘り下げて描いてあるので、ちょっとした行動にも大きな意味を読み取ることができる。人気シリーズならではの利点といえるだろう。
 今回はシリーズを通じての主人公である二人の鬼の出番が少なかったのが少し寂しい。それだけ登場人物たちが主役をはれるだけの存在感を増したといえるが。

(1998年2月10日読了)


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