読書感想文


解放の呪文
荒神伝 3
神無月ふみ著
中央公論社 C・NOVELSファンタジア
1998年1月25日第1刷
定価800円

 シリーズ完結編。「沈黙の魔都」の続刊である。
 荒ぶる神「荒神」の三つの要素、”攻撃””守護””癒し”の三つの力が三人の男たちに分散され、その力を得ようとする財界の黒幕とその三人が対決する。黒幕は魍魎の力を手に入れ、分散された荒神の力を凌駕し、三人を危機におとしいれる。またこれは、荒神と魍魎の代理戦争でもあった。
 異彩を放つのは”癒し”の力を持つ杉浦という人物。なにかというと長広舌をふるいたがる。このキャラクターのけったいな演説に、比較的単純なストーリーがかなり救われている。
 しかし、今さら「不老不死を夢見る財界の黒幕」もないと思うがなあ。ステロタイプ過ぎるような気がするのだ。いくらフィクションとはいえ、この手の人物は現代においては嘘臭い。物語にさほど破綻もなく、割と手堅くまとめているのだから、こういういかにもな人物は避けた方がいい。その方が物語に説得力がある。どうも読んでいると、この作者は世間知らずのお嬢さんではないかという気がしてならないのだ。
 ところで、結局この「荒神」は「かまどの神様」とはやっぱり関係なかったみたいだ。作者は本当に「荒神さん」のことを知らないのだろうか。こういう伝奇的な小説を書くぐらいだから、知らないはずはないと思うのだが。

(1998年2月15日読了)


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