読書感想文


誓星の恋−天帝譚−
藤原眞莉著
集英社コバルト文庫
1998年2月10日第1刷
定価495円

 「夢人に惑う星−天帝譚−」に続くシリーズ第6巻。
 黄帝不在の中で天地の理がほころびかけた天帝譚世界に、異界から聖妖獣が侵入、世界を司る天帝たちも気が気ではない。次期黄帝に指名された少女、絳星は、自分が幼い頃から家庭教師としてともに過ごした昏藤(次期黄帝のライバル?)への慕情に気付き、突如出現した妖獣とともに、昏藤のいる「闇の宮」へ。昏藤は「聖獣」としての力を蘇らせようとしていた。
 中華風異世界ファンタジー。前巻の感想でも書いたのだが、どうしてもこの箱庭的で閉ざされた世界に私は馴染めない。キャラクターだけならその個性もしっかり書き分けられていて面白く感じるはずなのになあ。どうもどの人物も湿っぽくていけないね。書き分けられているようで、根本のところではみんな同じなのだろうか。
 ありていに言えば、私はこういうタイプの小説が苦手なんですな。主人公が明るくて元気だった頃はまだついていけたのだけど。作者はまだかなり若い人。1978年1月生まれだから、まだ20才になったばかりか。作者が年をとるのと同時に主人公も変化していく。作者の人格と登場人物の人格がまだ未分化なので、作者が大人になるステップをそのまま踏んでいると見たが、いかがかな。つまりそのへんで感情移入できる若い読者には面白いのかもしれん。おっちゃんはそこらあたりが透けて見えるので辛くなるのかも知れません。

(1998年2月24日読了)


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