「修羅の艦隊1内南洋海戦」の続刊。
内南洋海戦で勝利した帝国海軍は、史実とは逆にミッドウェイを先に攻略、この作戦を囮とし、アメリカの目を引き付けておいてハワイ真珠湾に三方面から攻撃をかける。史実ではミッドウェイ海戦で敗因となった爆撃機の雷爆換装を真珠湾攻撃に織り込んだり、米軍が真珠湾攻撃を中止させるために一か八かで東京空襲を行ったり……。
史実のパーツをうまく並べ替えた興味深い構成になっている。
物語の主人公たちが様々な立場でこの作戦に関わり、人間模様を描き出していくという点は前巻から変わらない。人間の営みとしての戦争を書き綴る、秋月達郎の姿勢が貫かれているといっていいだろう。新人である作者の文章も1巻と比べるとかなりこなれてきた。
軍人となって活躍する男性主人公群よりも、社会主義運動に関係して大陸に渡り、ついには中国国民政府のために日本の暗号解読をするようになる小雪という女性の存在感が大きい。できれば物語の軸をこちらにおいてほしいくらいである。それでは架空戦記ファンには受けないか。
(1998年4月7日読了)