「星空のエピタフ(上)」の完結篇。
邦彦に憑依したのは1000年前の鬼だけではなかった。90年前にシベリアに落下したツングース隕石と思われる宇宙船に乗っていた異星人も鬼とともに憑いていたのだ。異星人たちは1000年の昔、地球に土着、同化しようとしたが、朝廷により排斥され、その血を蔵人や邦彦たちらわずかな者に残しただけでほとんどが滅びてしまっていた。復活した鬼の力を借りて故郷と交信しようとした異星人と、蔵人たちとの対決がこの間のハイライト。
単に正義の味方というだけではなく、自分の先祖ともいうべき存在と戦わなければならない主人公の苦衷なども描かれ、なかなか読みごたえがある。異星人という設定は少しイージーではないかなァという気もするが、有効に使われているので、まあいいだろう。
それより、登場人物がやたら説教臭いことを口走るのはなぜだ。人物がいろいろな体験をしながら成長していくのは望むところなんだけれど、それをいちいち口にしてはいけないよ。自力で成長したという達成感がないのですね。私は説教をたれなければならない仕事についているので、よけいに説教の無力なことを知っている。この説教臭さと、異星人という設定の唐突なところがなければ、もっと優れた作品になっていると思うのだが……。
この説教臭さ、作者の資質という気がしないでもない。
(1998年4月16日読了)