「堕天使の黄昏 ヴァンパイア・ガーディアンII」に続くシリーズ第3巻。
主人公ナオ、その正体は吸血魔女にしてヴァンパイアを守る見習いガーディアン。彼女の通う高校の修学旅行で京都に行くが、怪人メイガスにさらわれてしまう。彼はナオの恋人のA級ガーディアンである凱のパワーを利用して、吸血原種を蘇らせる魔界の門を開こうとしていたのだ。ナオはその囮ということ。凱はまだ京都には来ておらず、頼りになるのはガーディアン組織の京都支部から派遣されたネコの化身、夏姫だけ。ホムンクルスを操るメイガスとナオたちとの激しいアクションが読ませどころ。
ではあるのだけれど、なんか、空騒ぎという感じがする。アクションは派手だが、それだけ。物語の仕掛けがなんとも弱い。
不満点はそれだけには留まらないのだ。前巻の感想でも書いたが、キャラクターに寄りかかり過ぎで、そのキャラクターの新しい魅力を引き出しているわけでもない。前巻より悪くなっているのではないか。
私事で恐縮だが、今年、私は修学旅行を担当している。そんな教師として、この作品には腹がたった。ここでは修学旅行を生徒が自主運営しているようなことが書いてあるが、高校1学年単位での旅行では旅行会社抜きでは実施は不可能といっていい。だいたい生徒の自主運営を校長が許さない。たとえ許しても公立なら教育委員会、私立なら理事会の段階でストップがかかる。安全面での責任の所在が不明確になるからである。たかが小説に何をそんな細かいことをという人もいるかもしれないが、90%のホントに10%のウソを混ぜたくらいでないとリアリティというものは感じられないのだ。全体の設定がデタラメではウソくさくて読めたものじゃない。読むのは中高生だから、ではすまない。それは子どもだましというやつだ。自分は学校に通った経験があるから取材しなくてもいいと思っているんでしょ、としかいいようがない。その時点で、この小説は失敗作。京都弁の不正確さは言わずもがな。ちゃんと取材したの? と問いたい。最低限のモラルでしょう。
(1998年4月24日読了)