読書感想文


覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦 上
谷甲州著
中央公論社 C・NOVELS
1998年1月25日第1刷
定価800円

 「覇者の戦塵1942 急進真珠湾の蹉跌」に続くシリーズ12冊目。
 前巻で行われた真珠湾攻撃と同時にミッドウェイ強襲作戦も行われる。まさに大バクチではあるが、このシリーズの場合、それまでの積み重ねから必然的に導き出されてきたもので、あざとさはない。必然性と蓋然性の組み合わせの妙がこのシリーズの持ち味となっている。蓋然性は蓮美大佐という海兵隊のリーダーによってもたらされる。そのことによって本筋からはずれてしまうということはない。
 本巻ではミッドウェイ攻撃の結果空母赤城、蒼龍が炎上、ピンチのさなか、海兵隊の活躍でなんとかミッドウェイ上陸を果たすというところまでが描かれる。ここでも蓮美大佐の強引な作戦が核となる。この人物のおかげでエンタテインメント性が高くなり、どちらかといえば地味な展開の物語だったものが、読みものとして面白くなったことは確かである。ただ、ちょっと蓮美というキャラクターに寄りかかり過ぎなのではないかという危惧もある。そのへんは下巻でどう展開させていくかということだろう。

(1998年5月8日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る