「逆劇ヒトラー奪還作戦」の続刊。
替え玉ヒトラーの正体に気づき実体を奪還しようとした主人公、御厨太郎=タンネンベルク大佐は、彼を邪魔に思うヒムラーたちによって常に最前線で戦わされることになる。クルスクの攻防戦では、実戦のテストもされていないパンターやフェルディナントといった戦車を押しつけられるが、小形戦車との併用でソ連軍を防ぎ、奇策を用いて撃退。次いでまわされたイタリア戦線では米軍を市中におびきよせ、泥水をためた堤防の堰を切るという奇策などを用いてこれをよく防ぐ。
戦国時代編から数えて15冊目。御厨の戦術に失敗はない。それを妨害する味方がいるのみである。戦略通を自認する作者ならではの細かな描写が読みどころで、ファンもそのあたりについているのだと思う。しかし、前巻の感想でも書いたけれど、ドイツ編になってからとにかく一つ一つの戦いをしらみつぶしに描いており、話があまり進まないのは正直いってしんどい。
実体ヒトラーを取りかえし御厨の好きなようになる展開にすると、御厨の障害になるものがなくなるので話を先延ばしにしているのだろうが、この調子ではいつまでたっても話が終わらないぞ。そろそろ区切りのつけどころではないかとも思うのだが。まさかどのような結末にするのか考えていないわけはないと思うが。
(1998年5月10日読了)