読書感想文


クリムゾン・ナイトメア 紅の凶夢
まんちゃーだ妖異譚
秋津透著
角川スニーカー文庫
1998年4月1日第1刷
定価480円

 新シリーズの開幕。
 ぶちという名の霊能者が全寮制の女子校で次々と生徒が死んでいく事件の解決を依頼され、女装して寮にもぐり込む。そこでぶちはドールマスターと呼ばれる謎の医師と対決する。
 ライト・ノヴェルという言葉はこの作者のためにあるようなもので、ノリのよさは天下一品。しかし、アナが多い。
 敵の正体を早々とばらしたりするのが、そう。途中で敵の視点から見た場面を挿入し、謎解きの楽しみを奪っているのだ。まあ、主題はアクションを楽しむところにあるのだからそれでも別にいいんだろうけれど。でも、もう少し謎を引っ張ってもいいんじゃないの。
 それから、ぶちがいくら小柄で可愛い顔をしているからといっても、女装しただけではすぐに男だとばれてしまうと思うんだけど。まさか声質もカストラートなみとかいうんじゃないだろうね。スネ毛はどうしたんだ。脱毛したのか。細かいようだが、ウソをホントらしく見せるためにはそういうところをないがしろにすべきではない。
 重箱の隅をどんどん突く。3月9日の日記で私が書いたことを作者は全てやってくれている。「現代国語」なる科目は今はない。「現代文」だ。もう10年以上前から変わっているのに。
 校医が常駐している学校はない。それは前述の日記に書いた通り。もっともこれが否定されるとこの物語の設定全部がオシャカになってしまうのだが。
 小学校の時に長欠したので留年したという女の子がでてくるが、義務教育に留年はない。私立の場合、退学して公立に行くことになるかもしれないが、公立ならそのまま進級する。
 いくらライト・ノヴェルだからってここまでいいかげんなのはいけない。ちゃんと調べればすぐに解決する問題なのに。これでは現役の高校生が読んでもおかしいと思うかもしれんよ。

(1998年5月17日読了)


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