「八咫烏奇談」に続く伝奇オカルト第4弾。
追儺師・天本森と精霊と人間のハーフ・琴平敏生の二人がロンドンに飛び、幽霊を昇天させるストーリー、と書くとみもふたもないか。
ゲイの幽霊が、自分の愛した男の自分への愛を確かめたくて、二人の証であった指輪を持つ者の前にあらわれる……、という話よりも、森と敏生のあやふやな恋愛関係を描くいわゆる「やおい」小説である。彼らをロンドンに呼び出したのは森のもと同居人というカメラマン・松山美代子。彼女と森が別れた理由を聞き出した敏生は自分が森からどうでもいいと思われているのではないかと煩悶する。でも彼はそれを恋とは思っていない。
いや、私にはこの関係がわからない。それよりも森と美代子が同居していたというのに、そのような過去を二人の会話などから生々しく感じ取れないのだ。肉体関係はなかったみたいなのだが、森自身は自分はノーマルだと思っているという設定なのだから、女性と同居していたのに全くセックスレスということはあるまいと思うのだが……。
「やおい」だからどうこうというのではなく、この程度の人間関係の描写ができないというのは……。前巻の感想で「筆力がある」と書いたけど、買いかぶりだったか。
(1998年5月29日読了)