「吼える海流」に続くシリーズ第2巻。
前巻と同様、伊集院従吾とその仲間たちが、義経=ジンギス汗の秘宝をめぐって秘境で大活劇をくりひろげる、異色の大正冒険ロマン。
今回は「八尺にの勾玉」が南極点の下にある地下大陸で水棲人の神殿に祭られていて、それを探し求める従吾と暗闇公爵の対決となる。ヴェルヌ+ドイルの線を狙っているのだろうし、それはほぼ成功しているように思う。
よく書き分けられたキャラクター、地下大陸の描写、次々とくりひろげられる冒険と、一気に読ませるだけのものは確かにある。面白さを追求した快作だと思う。
ただ、2点気になるところがある。
なぜ、ジンギス汗の秘宝が南極の地下になくてはならないのか。前巻でもそうだったけれど、説得力がない。その理由の説明さえされていない。
そして、主人公たちの敵で秘宝を狙う暗闇公爵。何百年もの齢を重ね、恐るべき力を持っているのだから、特に傑出した力があるわけではない日本人に探しに行かせて、それを横からかすめとるようなケチなまねをしなくとも、自分の力で取りに行くことは十分可能であろう。それぐらいのキャラクターとして設定されているのに、なぜちゃんと秘宝を見つけることができるかどうかわからない連中を出口で待ち受けるようなまねをするのだ。
この2つは、シリーズの根幹にあたる部分である。そこに説得力がないというのは致命的だと思うのだ。そんな堅っ苦しいことはどうでもいい、話が面白いんだからいいじゃないか、というようなレベルの問題ではないのだ。伏線も張ってなければそれらしいことを匂わせもしない。完結篇ではどのように説明がなされるのか、注目したい。
(1998年6月26日読了)