読書感想文


覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦 下
谷甲州著
中央公論社 C・NOVELS
1998年2月25日第1刷
定価800円

 「覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦 上」に続くシリーズ13冊目。
 ミッドウェイと真珠湾の二面作戦は蓮美大佐の天才的な行動で、かろうじてミッドウェイ上陸をはたすという結果となった。そして、そこから日米両国の消耗戦が始まっていくわけである。
 本書では多くの登場人物がこの戦争を短期決戦とみているなかで、蓮美ら数人だけが長期戦になることを予測しているような作戦をたてる。そこで思ったのだが、蓮美というキャラクターは「改変されない歴史を知っている」のではないだろうか。ただ単に物語を動かしていくだけの役回りとはどうも思えないほど突出しているのだ。このシリーズのはじめのころ、謎の僧が出てきて「改変されない歴史」について語ったりしていたものだが、最近とんと出てこなくなった。その代わりというわけではないが、蓮美が鍵を握っていることは確かであろう。
 そう考えたくなるほど、蓮美大佐のひっかきまわし方は激しい。
 作者の意図はどのあたりにあるのか。そんなことを考えながら読むことのできる架空戦記というのは、そんなに多くはないのだ。

(1998年7月7日読了)


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