読書感想文


神の目の凱歌 下
ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル著
酒井昭伸訳
創元SF文庫
1998年7月24日第1刷
定価800円

 「神の目の凱歌 上」の続き。
 これ、スペースオペラじゃないし、戦争SFでもないよ。
 実は、戦争SFだからということで私に書評の依頼がきたのである。戦争小説(架空戦記ではあるが)の読み手代表としてご指名だったということだろう。
 戦争のシーンが出てくるからといって即戦争SFと決めつけない方がいい。外交の延長であるところの戦争は出てくるけれど、戦術面ではとにかく時間稼ぎで逃げ回っているばかりだから、たいして面白くないのだ。逃げ回る理由とか、戦争になる理屈とかは書き込まれてるから説得力はあるけれど。
 ただ、ちょっと人類に都合がよすぎるのではないかとは思う。新しいジャンプポイントができる前にモーティーが不妊になる細菌が見つかるというのもそうだし、その菌を有無をいわさず感染させておいて、あとから友好を求めるというのもひどい。そんな乱暴なことをしておいて相手が共存しようと思ってくれるわけがないだろう。なんか、原爆投下のおかげで戦争が早く終結したという理屈と似ているような気がする。
 これだからアメリカ人というのは困ったものである。

(1998年8月2日読了)


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