読書感想文


ヴェイスの盲点
クレギオン
野尻抱介著
富士見ファンタジア文庫
1992年6月25日第1刷
1995年4月10日第5刷
定価480円

 宇宙の零細運送業者、ミリガン運送の2人が機雷に囲まれた惑星ヴェイスに荷を運ぶ。機雷を突破するためには専門のナビゲーターが必要だ。ミリガン運送が雇った少女メイはこれが初仕事。メイはうまくアルフェッカ号をヴェイスに着かせることができるだろうか。
 機雷のために経済発展が抑えられている惑星ヴェイスと惑星のまわりにコロニーを作り交易を独占する大企業とくれば、そこになにか裏があると感づいた。が、むろんこれは宇宙を舞台にしたミステリではない。だから、ことの真相を探るよりもボロ船が機雷をすりぬけるシーンや宇宙サルベージのシーンなどの描写を楽しむべきだろう。実際、作者は「はじめて小説を書いた」新人とは思えない筆致で読者を引きつけている。
 少女が全力を出して不可能と思える作業を一つずつ突破していく様子は、のちの「ロケットガール」などにも通じる成長の物語だ。そういう意味では、処女作にして作者は自分の作風を確立していたといえなくもない。ヤングアダルトの本道なのではないかとも思う。

(1998年8月4日読了)


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