「ヴェイスの盲点」に続く、クレギオン・シリーズの第2巻。
正式にミリガン運送に入社した新米宇宙ナビゲーター、メイの初仕事。いかにも地方出身といった感じのメイのおっとりしたところに好感が持てる。
太陽化計画でつぶされる惑星には環があって、そこには何代にもわたって生活している人たちがいる。彼らは低重力の世界に適応していて、1Gの重力のかかるところでは生活できないのである。しかし、計画を急ぐ政府側は彼らを強制転居させようとしている。計画が中止になるにはその惑星に生物がいるという証拠がなくてはならない。ロイドたちはなんとかその証拠を捏造しようとする。
このシリーズはいろいろな設定の星々でそこに順応しながら生きていく人々の生活が活写されているが、その生活感こそがシリーズを支えているといっていい。視点はそこに仕事で立ち寄るミリガン運送の面々である。それは作者の視点でもあるのだが、主観もまじえた外部からの見方というのが読者の視点とも重なりあうように思う。
むろんこれはSFなのだ。たとえば、惑星の環の風景などの描写ではちゃんと考証した上で考え得る風景を描いている。その「見てきたような嘘」のつき方がいいのだ。SFでなければつけない嘘とでもいうのかな。
(1998年8月6日読了)