読書感想文


アフナスの貴石
クレギオン
野尻抱介著
富士見ファンタジア文庫
1996年3月25日第1刷
定価560円

 「タリファの子守歌」に続く、クレギオン・シリーズの第6巻。
 突如ロイドがミリガン運送と宇宙船アルフェッカ号を売り払って失踪。失業者となったマージとメイは新しい船主のもとでうまくアルフェッカ号に乗り込むことができたが、この船主、なにやら訳ありのようで……。
 ロイドを失踪させて、これまであまり強調されなかったロイドの存在感を示すという試みは成功していると思う。また、ロイドの失踪の原因を作った詐欺師も根っからの悪人になりきれない男という描き方がされている。そのあたりのハート・ウォーミングなタッチがこのシリーズの長所ではないだろうか。
 本書の目玉は、タイトルにある”アフナスの貴石”である。これはネタバレになるからあまり書きたくはないのだが、単なる宝石ではないのだ。宝石探しのお話が一転して壮大なSFへと展開していく、アイデアといい結末への盛り上げ方といい、SFでしか味わえない高揚感をもたらしてくれる。
 これだけのアイデアを、ロイドのなんともお気楽なキャラクターをつかって、深刻な重苦しいハードSFのイメージとは違う、誰にでも楽しめるものにしているのだ。これはすごいことだと思うのだが、どうだろうか。

(1998年8月6日読了)


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