読書感想文


ベクフットの虜
クレギオン
野尻抱介著
富士見ファンタジア文庫
1998年7月25日第1刷
定価560円

 「アフナスの貴石」に続く、クレギオン・シリーズの第7巻。
 いつも無茶な仕事ばかりさせられているのに、故郷の両親に心配をかけまいと安全な仕事ぶりを強調した嘘の手紙を書き続けているメイ。なんと、両親がその仕事ぶりを見にくるという。
 これはシリーズ全体の流れ、特に物語の発端を生かした展開である。
 わざと安全な仕事を選んで両親を安心させようとするメイだが、荷物を運んだ先の惑星で海賊に捕まってしまう。自分の身の安全よりも、両親との待ち合わせの約束を破る方が気になってしまうというのがいかにもメイらしくてよい。
 結局一番見せたくないところを両親に見られてしまうというのは、お約束といえばお約束なのだが、ここを外してしまうと物語自体が成立しなくなってしまうので、必然的な展開といっていいだろう。
 海賊の少年がいきなりメイにプロポーズする場面がある。その時は年頃の女性なら誰でもいいという感じなのだが、そのあとの展開で、少年がメイに対してどのように感情を変化させていったのか、彼がメイを助ける場面なんかもあるだけに、そこらあたり、もう少し彼の気持ちを知りたい気がするし、メイも彼をどのように思うようになったのか、それも知りたい。たぶん仕事のことに気がいってしまってそれどころではなかったかもしれないのだとは思うが。
 シリーズが続く中で、今後メイが一人の人間として成長していくためには、恋愛や親しい人の死など必ずくぐらねばならない関門があるはずだ。それらに正面からぶつかっていく彼女の姿もこれからぜひ描いてほしいと思わずにはいられなかった。

(1998年8月6日読了)


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