「怨讐の交差点」に続くシリーズ第3弾。
このシリーズへの好感を持てるところは、主人公たちは霊能力をもっているのだがそれぞれに限界があるというところだ。起こる事件は、強大な敵が人類に害をなしに来るのではなく、個人の悲しみ怨みなどが形となって事件となるという、つまり、人間関係というものの機微というものを描こうとしていること。そして、解決は事件の原因となる霊を癒すという方向で進められるというところ。なによりも、作者が人間というものを信じていることが感じられるという救いがあるのが好ましいのだ。
ちょっと楽観的といえなくもないが、殺伐とした作品や観念的で説教臭い作品が多いので、このシリーズを読むとほっとするのだ。
本書では双児の妹が部屋に閉じこもっているのでなんとかしてほしいと依頼する同級生が登場。双児の姉妹の互いへの感情、人間関係なども含めて、主人公の2人は共感しつつ解決への道を探る。
女の子たちの生き生きとした描写も微笑ましい。
このシリーズを傑作とか大作とかそういうようには思わないし、作風はむしろ平凡ではあるのだけれど、なんとなく心に残るものがある。そんなシリーズである。
(1998年8月9日読了)