読書感想文


倒凶十将伝 巻之九
庄司卓著
朝日ソノラマ文庫
1998年6月30日第1刷
定価450円

 「倒凶十将伝 巻之八」の続刊。
 いよいよ現世魔王が現出して、その骸と合体しようとする。その時魔王は復活し、世界は魔王の手中に陥るのである。
 続々と集結する十将たちはそれぞれの形で魔王(にとり憑かれた学生、吉良出雲)と骸が接触しないように妨害していく。骸は巨大な火焔に包まれた怪物の形をとっていて、手出しがしにくいのだ。
 ここらあたり、もう物語のクライマックスですね。
 しかし、前の巻の感想でも書いたのだけれど、十人の個性を描き分け切っていないということもあって、戦い方がどうも不十分という気がするのだ。こういう性質の物語ならば、キャラクターの性格づけはもっともっと極端でもいいのではないだろうか。
 現世魔王の力というものがよくわからないというのもある。我々には計り知れない強大なものなんだということだろうけれど、ただなんとなく巨大でなんでもできる怪物という感じでしかない。具体的な能力が今一つつかめないので、十将の力ではとてもかなわないのではないかという印象すら与える。
 ラストの対決では、ぜひ十人それぞれの持ち味を生かした連係プレーでの勝利というものを見たいと願っている。

(1998年8月10日読了)


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