「憎みきれない好敵手」に続くシリーズ8冊目(外伝を含む)。
今回はある村に仙術の源泉となる「混沌」をまきちらす敵がいるのだが、その正体は剣の宝貝で殷雷の旧友。どうもそんなだいそれたことをするような奴ではない。実際、戦いはあっけなく終わってしまう。ところが、この事件を影で操るとんでもない敵がまだいて、和穂たちはそれに気づかず村を立ち去ってしまう。それを確かめた敵の反撃が開始されて……。
ふた筋の物語をうまくからませながら話を進めていくその展開がきっちりと描かれていて、なかなか読みごたえがある。1作ごとにうまさを増していく作者だが、本書でもその成長のあとがはっきりと見られるのは嬉しい。
村人の人間関係の描写などが中心となり、その分和穂たちの活躍が少ないのが残念だ。しかし、レギュラーキャラクターの個性だけに頼るのではなく、ストーリーで勝負している分だけ、作風に広がりを見せているとも言える。
ところで、冒頭で和穂たちが海鮮鍋をつつくシーンがあるが、舞台は山の中らしいのでこれはなんか違和感がある。そういった細かなところで不用意な部分があると、作品のでき自体がよいだけに、目立ってしまう。
(1998年8月24日読了)